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「#幼馴染」のBL小説を読む
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酒のせいで記憶を失くすことは多々あった。飲みすぎた日の翌日は頭が痛いし、吐き気もして1つの行動を取ることさえまま成らない。 マルコは自分の船室のベッドの上で横になっているのが分かった。ゆらゆら揺れる船の動きに合わせて、胃の中のモノが揺らされているようで気分が悪い。「…っ」痛む頭を起こしながら、マルコは昨晩のことをどうにか思い出そうとした。 確か、二人分の酒を持って、所在なさげにしてたナマエに声を掛けて、そしたらナマエがやけに饒舌になって……… あ!



「……ナマエ……」



ナマエが、隣にいない。 やっぱり、夢だったのかもしれない。 マルコの欲望や妄想が形となって見せた、夢。日の出と同じくまだナマエが自分の隣にいたら、全てを信じようとしたのは自分の方だ。別に何が哀しいと言うわけじゃない。 ナマエが抱きしめてくれたことも、無口すぎるナマエが自分のことを"温かい"と称したことも、多分全部、




「…………だから、何だってんだよいってか」



夢だったから、だからどうしたと言う話だ 現実ではないなら、またもう一度アタックを試みるだけ。酒の力を借りれば、ナマエの顔を真正面から何分だって見つめられる。素面では難しいから、また次の宴の日を狙ってみよう。 嫌われない限りは、好きでい続けられる




「酒の調達から始めねぇと………」

「なんだ、まだ飲むつもりだったのか?」

「………ぅえ?」



滅多に来訪者のないマルコの部屋のドアを開けたのは、水の張られたコップを持ったナマエだった



「な、ナマエ!?」
「吐き気はするか?水を貰って来たから飲め」
「え あ、あれ」
「…何だ?」
「これ、まさか夢の続きか?」
「 夢?」
「昨日……………」



抱きしめていてくれたのは、 と言いかけてマルコは羞恥心に負けた。どっちが現実かは分からないが、何となく口に出すのは憚られる。 ナマエが、一回も目を逸らさずに見てくるせいだ!と謂れの無い苛立ちがちょっと湧いた。
だがナマエの方は相変わらずの無表情で、「…水飲め。吐くぞ」と促している。その目が少し細められたので、マルコは慌ててナマエの手からコップを受け取り全部飲み干した。とても冷たくて、ぼんやりした頭にいい刺激が来る



「昨日は酒を飲みすぎだマルコ……」
「や、やっぱり昨日のって夢じゃないよい?」
「……………夢の方が、よかったか?」
「そんなことない!」
「……なら良かった」



ナマエは、ちゃんと今朝までずっとマルコの傍にいてくれていたらしい。――介抱と言う名目で

酒と、活気と、熱のせいでマルコはあの後すぐにナマエの腕の中で眠ってしまったらしかった。そんなマルコを他のクルー達と同様に甲板へ転がしておくことが出来なかったナマエは、わざわざ寝室へと運び送り、マルコの体の汗を拭ってやり、汗まみれになっていたから服を着替えさせ、一晩中傍の椅子に腰掛け看ていてくれてたのだと言う



「な……な、な…」
「そろそろ起きそうだなと思って、水を貰いに行った。その間に起きたんだろう」



目が覚めたときにナマエがいなかったとか、重要なのは もうそこではない



「す、すまねぇよいナマエ…!世話かけちまって…!」
「…ああ、気にするな マルコでなければ、やっていなかった事だ」
「…!!」



大きい無骨なナマエの手が、マルコの頭をそっと撫でる。外に出ていたナマエの冷たくなった掌が地肌に気持ちよくて、うっとりと目を細めた。
パッとその手が離れて行く時は、少し名残惜しく見すぎてしまった



「………もう大丈夫そうなら、俺は仕事に戻るが」
「あ…お、おう」
「………………」
「…?ナマエ?」


「…夢じゃないかと疑ったのは、お前だけではないからな、マルコ」
「な…!それって、」
「…お前が俺を好いてくれていると言うのは、俺の勘違いではないか?」
「……勘違いなんかじゃねぇよい…」
「そうか」



 やはり、嬉しいものだな



工具道具をぶら提げたベルトを締め直したナマエは、もう一度マルコの頭を撫でてから船室を後にする。ナマエの大きな体が、天井に当たらないように身を屈めて出て行くのを見送りながら、マルコはへなへなとベッドの縁に腰掛けた。




"嬉しい"ってよ あのナマエがさ、嬉しいって、




「……おれだって、嬉しいんだぞバカ野郎…!」




その後、マルコはまた熱を抑えるのが大変だった。 何とか気分も良くなり外に出られる姿になり、甲板に出ると陽光キツイ太陽の下、大勢の仲間たちが二日酔いで苦しんでいる。「情けない奴らだよい」と笑ってやれば、ダウンしていたラクヨウが口を尖らせながら「マルコはナマエに看病されてたから体調もそら良くなるわなー」なんて言って、他の奴らもそうだそうだーと同調してくるものだから、何でそれを知ってるんだ!?とマルコが押される番だった。
 大きな板金を担いで甲板を横切ろうとしていたナマエは、そんなマルコの姿を見てこっそりと口元を緩めた