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*主人公生まれ変わり

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ひっでェ嵐だった。

甲板にあった物は粗方流され、サブマストには大きな大きな風穴が開いた。雷雨犇く黒い雲に何処までも付け狙われてるような感覚と、暗い波に飲み込まれて行きそうな深く荒れる海。 しかしどんなに損傷しようとも、決して沈まないのが我等がレッド・フォース号の底力と言うもの。 撫でて労わってやりたいぐらい可愛い船だ。だが、この損傷具合は頂けない。折角酒を大量に購入して後にした島へもう一度引き返してドックに修理に出さなければいけないな。



甲板に出てクルーと一緒に水出しに精を出していたベックマンが「船長もコッチ手伝ってくれ!」と声をかけて来る。まあそれもいい気はしたが、生憎この事を航海士チームと相談するという役目がある 「おれが話し終わるまでに、水全部無くしとけよ〜」「船長てめー!」 嵐の後でも、みんな大変元気があってよろしい











「てワケでよ、ちょっとばかし嵐に出くわしちまったんだ。修理してくれ」
「…ちょっとってアンタ…この辺りの海の嵐は町1つ破壊しかねない威力のモンばっかりだぞ…?それを こんな軽傷で留めたのか…!?」
「はっはっは!おれのレッドフォース号は凄いだろ!」



数日前に後にした島に戻ってきた。よくココまでレッドフォース号ももってくれた物だ。



「後でいい子、いい子してやろうな〜」
「…船長」
「ん?なんだぁベックマン まだおれが水出し手伝わなかったこと根に持ってんのか?」
「別に あんな嵐とまた出くわしちまって、えらくテンションを上げてんなぁと思っただけだ」
「………」



そこは突っついて欲しくねぇところだったな、ベック

「……そんなんじゃ、ねぇよ」
口から出た妙にしょぼくれた声に、シャンクスはそっと唇を噛み締める
もう、嵐の影も形も見えない 明るい場所に出てこれたと言うのに、やはり気分はちっとも晴れやかにならない



シャンクスは嵐が嫌いだった 大嫌いで大嫌いで、とても許せないもの





「…そう怖い顔をさせるつもりで言ったんじゃねぇよ」
「 だろうなァ! おし、ベック 酒調達行ってこい」
「!? まだ買うつもりなのか!」
「結構流されちまっただろー?補充だ、補充」
「ったく…!程ほどにしか買ってこねぇからな!」



肩を怒らせ、擦れ違う人々を怖がらせながらベックマンが街の雑踏の中に消えて行く
それを見送りながら、背後で行われているレッドフォースの修理風景を 何とはなしに見上げた



「どれくらいで直りそうだ、おやっさん」
「そうだなぁ…修理と補強だけで良いってんなら半日も貰えば済ませるが…人手が足りねぇな」



ちっと待っててくれ。 台に上がって船の検査をしていた船大工が降りてくる。
慌しく腕まくりをしつつ、店内の中へと誰かを呼びつけた





「―――ナマエ!! コッチ来て手伝え!」


ガタンと引き戸が開かれる音がして、中から気だるそうに構えた男がノソリと現れる
呼ばれたことに対し不機嫌そうに顔を歪め、シャンクスの目と耳が男を確認できる距離にまで現れると、



「……怒鳴らなくても聞こえてっよ親父」

鼓膜の奥でずっと消えなかった声 思わず手に持っていた酒瓶を取り落とす。割れた傍から液体が零れて来て、足元を濡らしたがそれよりも

「………………ナマエ、?」

「ん……? ああ、お客さんですか らっしゃーませ」

「こらナマエ! 客にはキチンと挨拶しろバカ野郎!」


工具箱を持った男が近付いて来る
ぼんやりと半分だけ開かれた目が、気だるく聞こえる声音が、


「おいナマエ……ナマエだろ!?」
「ぶっ!? はぁ!?ちょ、お客さん何…!離れてください!」
「お、お客さん、うちの息子と知り合いなんで?」



男は――ナマエは、18年前の嵐の夜に、船長を庇って海の中へ落ちたまま帰って来なかった者に酷似している

シャンクスは、逞しすぎる右腕の力だけでぎゅうぎゅうに男を抱きしめていた。
「海賊に知り合いなんかいねぇよ!」と父親に抗議する声と、「お、お客さん離してくださいって…!」と困惑する声が頭上から聞こえてくるが、抱きつく腕を緩めないままシャンクスはボロボロと涙を零す


目から出てくるのは涙

口から出てくるのは 深い謝罪



「すまん、すまなかったナマエ…! おれがもっと力をつけていればと、あれ程後悔した日もない!そうすればお前は、おれを庇って海の中に行ったりしなかったんだ!」
「あの日の夜…!?だから何の話で… 誰かと勘違いしてるんじゃねっすか?」



 勘違いしてるわけがない お前は、こんなに泣きたくなるぐらい ナマエじゃないか



「ナマエ!今度はもう絶対にお前を放したりしないからな!」
「んな!?ちょ、ちょちょっと何の話っすか!?―――おい親父!見てるだけじゃなくてこの赤髪さん引き剥がすの手伝ってくれ!片腕だけなのに物凄ぇ力なんだって!」