海賊になった理由の幾つかの一つに、"あわよくば…"と思う物があった
何処とは知らぬ巨人族の島、エルバフにいつか着くことが出来ればと思ったことは何度もある
それはいつも、"自分が会いに行く"側の思考をしていた
それがもし、"向こう"から会いに来てくれた場合のことを ニューゲートはちっとも想定していなかったのである
「あぁ…なんだ、…54年ぶり、だなニューゲート」
「…おや、……じ……」
過去よりも幾分老けている父の姿は、54年の歳月を考えると不変に近い。それに比べて、ニューゲートは随分と様変わりした筈だ。昔よりも背丈は伸び、顔の輪郭も変わって、声だって低くなった。なのに、
「……死に場所を探してまた旅をしていたんだが、よもやこの場所でまたお前に会えるとはな」
「………此処は……」
「お前を 俺が拾った場所だな」
新世界の海に浮かぶとある島――『ニューゲート』
71年前、此処でナマエと幼いニューゲートは出会った
それはとても昔のようで、つい先日のような話のようにも思える
「…あれがお前の乗る船と、お前のクルー達か」
「………ああ、おれの、息子たちだ」
「はは、それは良い。つまり俺からしてみれば孫がたくさんいると言うことか、はは」
笑っている。目の前で、ナマエがわらっている
「………おやじ……おれ、おれぁ……」
「…お前の話はエルバフにまで届いていたぞ "トンデモナイ海賊がいる"とな よもやそれが、俺の息子のことだとは誰も気が付かなかったらしいがな」
――ニューゲートの話題がエルバフにまで届く度に、とても嬉しくなったものだ。
遠く離れていても繋がりがあるものの話が聞けるとあんなに喜ばしくなるのかと戸惑ったこともあったな、確か
自船の船長が巨人族の男と親しげに話しているのを見て、クルー達は興味津々そうに見ている。
だがニューゲートは、その諸々の視線にさえも気が付かない程に目の前の男を食い入るように見つめていた。
ナマエはそんなニューゲートの、自分より少し下にある頭を優しく撫でた
「…お前は、立派な俺の息子だ」
「俺は、お前を 誇りに思う」
感極まって泣くなど、一体何十年ぶりのことだろう
「お…や、じぃ…!」
「おいこらこら、泣くんじゃないぞ 全く…」
"抱きしめられる"ことも、"甘やかされる"ことも、
どんなにこの世界と海が広くとも、大勢の人間がいようとも
ニューゲートにとってそれはたった一人の"父親"だけに他ならなかった