大した場所ではないけれど、誰かと連れ立って歩くそれだけで世界はこんなにも楽しさで満ち溢れる
「いてぇって親父!」
「煩いぞニューゲート 黙って歩け」
「ツタが絡んで歩きにくい!親父、手ぇつなごう!」
「駄目だ。エルバフの男は他者と手は繋がないと決まってる」
「またそれかよー!エルバフって何個決まりあるんだあ」
おれが文句を言っても、親父は全然耳を貸してくれなくてズンズン道を歩いて行く。
今日の島は、前に行った島よりも獣道ばっかりで歩きにくいんだぞ!
そりゃ、身体の大きな親父は苦じゃないだろうけど
もうそろそろ足が限界だあ、と思っていれば前を歩いていた親父が立ち止まって「…此処らで休息するか」って提案してくれた。勿論する!
「親父、おやじ!あそんでくれよ」
「…駄目だ。エルバフの男は…」
「うらぁー!」
こと遊びに関しては親父の言葉に従わなくてもいいって知ってる。
腰掛けていても大きな親父のでっかい掌に突撃をかませば、ひらりと避けられてカウンターでデコピンが返ってくる。
弱い力で押されて身体全体が後ろに倒されて、でもそれが面白い。
「もう一回やって!」
「…そんなことより食べれそうな果物を取って来いニューゲート」
「えー…わかったー…」
調達用の籠を担いで森に入ろうとすると、背後から「…ニューゲート」と呼ばれて振り返る
「なんだ??」
「…覇気は、ちゃんと抑えて行くんだぞ」
「わかってるって!」
本当に分かってるのかね…とナマエは首の後ろを掻いた。年々、覇気の大きさが成長しているんだぞ、お前
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ニューゲートが取ってきた果物と、ナマエが狩って来た大量のイノシシ肉を前にしても二人にとっては微量だった。
だがそれでも、ニューゲートは空腹を気にしない。
食事の後はいつも決まって親父が武器の稽古を付けてくれるのだ
「斧にしろ、斧に。ニューゲートにぴったりだ」
「それって見た目のはなしだろー? おれも親父みたいな長刀がいい!」
「…お前にはまだ無理だ。ほら、こんなにデカイんだぞ」
「これからもっと成長すればいいだけのコトだろ!」
「分かった分かった。ほら、掛かって来なさい」
「よしっ」
構えた木剣は、親父の掌で簡単に弾かれてしまった
暗い島の 夜が更けていく
ナマエが焚いた焚き火がチリチリと火花を散らし、足元で丸まって眠るニューゲートの顔を照らす。
もう5年か、それとも まだ5年か
巨人族にとっては取るに足らない年月ではあるが、曲がりなりにも親子となった者へ愛情が湧くのにそう時間は必要なかった