「ようモモンガぁ 今日もビンビンにモヒカンおったててんなー!」
「…ナマエ殿、そう言った反応に困る発言は控えて頂きたい」
んー?モモンガは何を想像したんだぁ? とナマエは今日も陽が高い時分から元部下であるモモンガにセクハラ全開だ。
綺麗に剃られているモモンガの頭皮を後ろからジワジワといやらしい手付きで撫で上げ、モモンガの背筋に悪寒を発生させる。
折角 彫りの深い顔立ちに見る者を引き込む青い目と綺麗に整えられた髪や髭で好印象を与える姿をしているのに、モモンガに対してはいつもこうだ。
残念と言うか、ガッカリと言うか、ここまで"勿体無い"と思える男もいない。
男であるモモンガに対して取るべき行いでもないだろうに、ナマエはニコニコと楽しそうに笑っている。その笑顔もまた爽やかなものでモモンガははぁ…と大きく溜息を吐いた
「…暇なのか、ナマエ殿」
「おお、よく分かったなモモンガ。老いたる兵士は成す事なしって感じでなぁ… 暇なんだ」
「…………」
力一杯答えないで頂きたい
任務がないにしろ、准将以上の将校にはやる事はまだ沢山ある筈だ。この人の部下であった過去を思い返す。毎日、各所で豪快なことをしでかすナマエの後をひいひい言いながら追って、同じくガープ中将の副官であった男と擦れ違えば「お互い苦労しますなぁ…」と目で会話し合ったものだ。あの頃は胃痛薬が友だった
「まぁ此処でモモンガと話していても駄目か。 新入りたちの訓練所に顔でも出すかな」
「それがいいだろう。 では、自分はこれで…」
「待て お前は今から任務か?何処へ行くんだ」
「……ボア・ハンコック召集の迎えの任務です」
「ああ、蛇姫か! いいぞうあの女は!お前見たことあるか?」
「…遠目になら、一度だけ」
「とんでもない美人だっただろう!」
返答に言い淀む。決して醜悪だなどと言えないが、ここで素直にあの美しさを肯定したくなかったのは、おそらくモモンガ自身の気の迷いである
どうしてそう目を輝かせて喋るのか、この人はいつもこうだ、と。
モモンガと会話をしている時よりも、女人の話をする時の方が愉快になる。
勿論それは、男としてならば当然と言った反応だが、海軍入隊時より前から堅物として知られているモモンガにとっては不純だと見えてしまう
「……自分は、あのような女は好きではない」
「…? 好き嫌いの話じゃないぞ? 妙な奴だな」
話を振る前より機嫌が悪くなったモモンガを見て、ナマエは?と首を傾げた。
どこで元部下の機嫌を損なわせてしまったのか。
考えても思い当たることはなかった。 だからとりあえず、昔のように頭を撫でておこう
「まあ、お前程の男なら蛇姫の毒牙にかかる事はないだろって信じているがな!」
「…何故にナマエ殿にそのような事を言われないといけないのか」
「それぐらい気をつけるべき存在だと言うことだ。気を抜くとパクっと丸呑み、石にされてしまうからな」
「………もしや、石にされたことがおありか」
「…………帰って来たら一緒に海鮮拉麺でも食いに行くかモモンガ!」
「……はぁ… 分かった、お供しよう」
「そう来なくっちゃなぁ!」
もうすぐ戦争が始まる。あまりゆっくりとしている時間はないだろうし、ましてや町の屋台に出かけている場合でもない。
きっとナマエとのこの約束が果たされるのは、まだ遠い先のことになろう
「……では、行って参る」
「おう 行って来い、モモンガ」
わざわざ見送り口にまで付いて来たナマエは、思わず見惚れてしまうぐらいの"イイ顔"で手を振った
「―――キズモノんなって帰っては来るんじゃねぇぞー!!」
…だから、そこが余計なんだと言っている