20万企画小説 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -






拾われた恩には出来るだけ報いようと思っている。
「この世界に慣れる」ことを目的として、恩人であるドレーク殿から少しの"お使い"を頼まれた。勿論それはお安い御用だ。元いた世界でも、似たようなクエストを何個もこなしてギルドのハンターランクを上げてきていたんだ。
と、伝えればドレーク殿は「それは良かった」と言った。つくづく良い人だと思う。



買って来なくてはいけないものは酒樽。
これからドレーク殿等は、極寒の地へと船を進めるそうで酒の購入は必須要項とのこと



レイアも付いて来たがった(と言うより、俺から離れて他の人間といるのが嫌なんだろう)が、街中でレイアを飛ばすわけにも行かず、
「すぐに戻ってくるから、大人しく待ってな?」と優しく目を見て伝えれば渋々と言った様子で頷いてくれた。喉の奥から焼けた匂いが漂ってきていたから、多分あれは怒りを我慢してるんだ。あれで案外、リオレイアは嫉妬深い奴だから。



渡されたリストと地図とを睨みあいっこしながら、目的の酒場までの道を歩く。



しかし、





「…………やはり、代わりの服をもらうべきだった」



周囲から寄せられる視線の方に耐えられない。それもそうだ。平凡な街中で、こんなに鎧を重装備している男がいたら不審な目で見るに決まっている。ガチャンガチャンとガントレットが音を鳴らし、レッグが地面を蹴る度に金属音がした。注目を浴びて仕方が無い。しかも、人々の視線は鎧だけでなく背中に背負われた飛竜刀へも向けられる。
完全に、不審者扱いだ



「………ハンターがいない世界では、これほどに変な目で見られてしまうのか」



強い郷愁が襲ってきた。
モンスターと死闘を繰り広げ、命のやり取りをしつつも、人々の為に生きていけるハンターとしての仕事
それが、とても懐かしく感じられる。
帰れる見込みはあるのだろうか、あの時討てなかった嵐龍がユクモの村を襲ってやしないだろうか、ギルドの皆は、村長は、村の者達は、大丈夫だろうか、




「―――…うわっ!?」

「っ!? わ、悪い!」



考え事をしていたせいで、前から来た人とぶつかった。千里眼で把握しているにも関わらず接触してしまうなんて、余程思考に没頭していたのか


大丈夫か、と差し出した手を「こっちこそ悪いな」と言って男が掴んで来た
素手だった男の手が、ガントレットの俺の手に触れて、「!?」とビクつく



「あ、冷たかったか?」
「……いや、そんなことより…お前、なんつー格好だそれ……」
「………こ、これに、深い意味は…」

「おーいハルターー でぇーじょーぶかーー」
「勝手に一人で先走んなあー」



男の仲間らしき者達が集まってきた。ドレッドヘアーが特徴的な男は俺の姿を見るや否や「ンだよそれ!」と声を荒げ、着物のような格好をした男(女?)は黙ったまま瞠目する。 そして一際大きな身体の男が現れ、見下ろされてしまった。
ああ、妙なことになった



「……何だ?その男は」
「べ、別に危害を加えようとは思ってないんだこれは俺の装備と言うか一張羅と言うか仕事服と言うかああああなあ俺は一体なにをいってると思う?」
「いや…知らねぇけど…」



最後に現れたこの大男 眼力が半端じゃない どんなモンスターの眼光も受け止めて来た俺だが、人間でこんなにオーラがあるのは初めて見た
しかも、周りにいる男たちも同様らしい。どんな猛者が集まった集団なんだよ



「おれがぶつかっちまったんだよ親父 コイツは悪くねぇ」
「どうせハルタがチビっこくて、アンタの視界に入らなかったんだろ? 悪いな、アンタ」
「んだとラクヨウてめぇー!!」
「こ、此方こそ前方確認を怠っていた。ハンターとして有るまじき行いを…」
「 ――ハンター??」
「ハンターって、動物とか狩りに行く、あれ?」
「………………聞き流してもらいたい」



何十と言う目が俺の方を向いている。 こんな所で立ち止まっているわけにもいかないと言うのに、俺にはドレーク殿から頼まれた大切なクエスト…じゃなくて任務が、






『ナマエ!!!』



「なンだありゃぁ!?」
「ドラゴンだぞ!!!」
「きゃあああああ!!」


「………レイアぁあ!」



空から翼をはためかせる音と風を切る轟音が聞こえ、身を小さくし滑空してくるレイアの姿が上空に見えた。どうして来たんだとか、余計に事態を混乱させてるぞとか、そんなことはもう忘れ去ろう。助けてくれレイア!この男たちをどうすればいいのか分からないんだ!



『掴まって』
「あ、あぁ」



「あ!!おい待てよお前!!」
「変な格好してる上にそれってドラゴンだよな!?」
「実在してたのか!?」
「何で一緒に行動してるんだ!?」



男たちの疑問の声を背中に浴びながら、レイアは俺を背中に乗せてグングン距離を引き離していく。
もしかすると道に迷っているかもしれない、とドレーク殿が零した呟きを耳聡く拾ったレイアは心配して来てくれたのだと言う。制止の声も無視して


結局、俺はお使いをこなせなかった。深く謝罪させてもらった俺に、「何かあったのか?」と理由を訊いてきてくれたドレーク殿に変な男たちに会ったことを話すと、顔色を変えた「何故この島に白ひげたちが…!?すぐに船を出せ!!」 ドレーク殿がこんなに慌てるなんて、あの男たちはやはり只者ではなかったのか!?恐ろしい……モンスターよりも人間の方が俺にとっては手強い存在なんだぞ、今後あんなことがあればどうしたらいいと言うんだ…




「……あー、お疲れだったなナマエ 今日のことは気にしなくていい」
「だ、だがドレーク殿 俺はお使いも満足にできなか」
「忘れるんだ いいな」
「………りょ、りょうかい…」



ドレーク殿 めっちゃこわい