唐突ですまないが俺の師匠がめっちゃくっちゃに可愛いくて俺の命キケン
「がー……すー……ぴー…」
ぴー、て!ぴーて!!!
なんだこれウチの師匠の寝息めっちゃ可愛えええええええええええええ失礼、取り乱した。今の叫び声は全て俺の心の中だけに留めておいたので安心してもらいたい。師匠の昼寝の邪魔をして、貴重な寝顔を見られなくするような愚行を俺がやるとお思いか?失笑だ。ジンベエ師匠の愛くるしい寝顔の一部始終は俺の眼力録画機能にきちんとインプットされている。向こう50年は多分この光景を忘れない。
七武海の称号を棄てたジンベエ師匠が魚人島に戻って来られてからは、以前のような(俺にとって)幸せな生活がまた戻って来たのは喜ばしい。確かに喜ばしいんだが、同時に俺の理性と言う理性を総動員させなければならない毎日にはニヤケ疲れてしまう。はは、なんて贅沢な悩みだ俺 昔みたいにマーメイドカフェの人魚ちゃんたちと遊んでいた俺はもういない。そう、今の俺はただジンベエ師匠の為に存在してるんだ!!!
「ナマエうるさいぞ!!!」
「はいごめんなさい師匠!!!」
早い話が、後半から言葉を口に出してた。「そ、そう言うたことはく、口に出すもんじゃないじゃろう!」怒るとこそこですか?と言ってしまいそうになる。嗚呼本当にうちの師匠ってかわ(略)
俺はシュモクザメの魚人で普段の顔は稚魚共が塩水流して逃げ出すぐらい強面なんだが、ジンベエ師匠の前だけは菩薩のように穏やかな顔をしていると思う。
今のこの幸せを十二分に噛み締めてる顔だ。そりゃ穏やかにもなるって
「や、信じてくださいよ師匠!俺はちゃんと起こそうとしてたんですよ?こんな砂浜で寝てたらお風邪を召されるだろうと心配で心配ででも師匠の寝顔を見てたら時が経つのってこんなに早くなるんですね、いやー知らなかったなー日々勉強だー」
「白々しいんじゃナマエは!! それに傍らで喧しく言いおって…途中聞こえた『バシャバシャ』言う音は何じゃ!」
「ああ、俺の眼力録画機能が火を噴いてたときのですね」
「何じゃそれは!!」
お前の目からはあんなけったいな音が出るんか!一度医者に診てもらえ!
俺の戯れを素直に心配してくださる師匠はなんて良い魚人なんだろう。はいそうですね今度診てもらいます、と感謝と共に受け止める。
ゆっくり砂浜から体を起こした師匠はうーんと頭を左右に振った。結構寝入っていたからクラクラするんだろうなあ可愛い
「師匠、背中についてる砂 払いましょうか」
「ああ 頼む」
「じゃあ…」
くるりと体を反転させた師匠の背中が目の前に差し出される。うずうずしてきた。いかんいかん
水かきのついた自分の手で、砂を丁寧に叩き落としていく。
僭越ながら師匠より身長のある俺なので、ジンベエ師匠の髪にもついていた砂も取り払った。「終わったか?」と訊かれたが、「いいえまだです」と返す。まだやりたいことは終わってない
「…しーしょう!」
「な、!?」
広い背中が惜しげもなく晒されたから、抱きついてみた。
突然のことに驚いて手足をバタつかせているジンベエ師匠に笑いながら「すみません、つい」と言えば、「ぬ、抜けぬけ言うてお前は…!」と怒られる。
でも離れろとは言われない。
優しい。
好き。
「ししょうー、俺、師匠のことすっげぇ好きです」
「そ、そうかい」
「今度は俺を独りにしないでくださいよ?」
師匠が地上に盗られてってから、俺すごい寂しかったんですから ね
「そ、れは分かった 分かったからそろそろ退けいナマエ」
「もうちょっとこのままで居ちゃ駄目ですか?」
「他のモンが見とるんじゃ!!」
師匠の言葉通り、街道を歩いていた親子連れと目が合った。
でも「あ、どうも親分、ナマエ。またやってますな。全く仲がよろしいことで!」と褒められましたよ?
あ、師匠が目をぱちくりさせてるか(略)
「何じゃいあの反応は!!」
「俺と師匠の仲を応援してくれてるんですよ!いやー心強いなー」
「お前さんとワシは師弟関係じゃ!」
「直にそんな壁もなくなりますって!」
「無くすなァ!」
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