20万企画小説 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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城で長らく眠りについていた石窯を掃除してみた。
使う予定もないからと放置していたが、調べてみると中々高機能な窯のようで料理に使う手はないなと思い立ち、こうして立ち上がってみた限りである。新品同然…とまでは行かないが、そこそこ見れる形になった。薪を用意して試しに火も付けてみたが、上手く行った。奥の方でごうごうと燃え盛る火を見ていると、無性に料理魂を擽られる。
そこでナマエはある事を思いついた



「皆で、ピザでもこしらえるか」











「……んでそんな事を思いついたんだよ…!」

「想像してみた結果、割に楽しい工程であったことを思い出してな」


「おいナマエ!生地はこのぐらいの厚さでいいのか!?」


「見ろ。あのようにペローナも楽しんでくれているだろ」

「だからって何でおれまで…」



ブツブツ文句を言っているゾロは置いておくとして、ペローナの才能っぷりには正直舌を巻いた。

どうしてそうなった、としか言えない生地が出来上がっている。
先刻見た時は上出来だったのに、ちょっと目を放した隙に生地の厚さが薄さになっていた。そんな紙のように薄っぺらくしては、具を置けないぞペローナ



「これは今日の夕飯になるんだからな。下手な物が出来てしまっても、俺は代わりの用意は何もしてないぞ」

「それを早くに言え」
「それを早く言わねぇか!」

「何なんだお前ら二人は」



急に力を込めて生地を捏ね始めた――当初から参加していたゾロはいいが、
今の今まで興味なさげに本を読んでいたミホークのその態度はどう言うことになるのか。



「トマト! ナマエ、トマト!」

「俺はトマトじゃないぞペローナ」

「トマト並べねぇとピザっぽくねぇだろうが!」

「トマトか………そう言えば丁度昨日切らしたような」

「ばかかぁー!!」

「そんなにか!?」



ポカポカと胸を叩かれてイタタタ。しかしそうは言われても今から買い物に出かける為に船を出したって間に合わないことは明白だろう



「よし ミホーク、この生地を等分に切り分けてくれ」

「…は?」

「黒刀を使えとは言わんぞ。その小刀でいいから頼んだ」

「…いや、ナマエ待て。そんなことの為におれの刀は使えな」

「いいからやってもらおうか」

「…………」

「(……そう言えばいつだったか、おれも似たような目に遭わされたことがあるな…)」



ナマエのオーラと気迫に根負けしたミホークが胸から下げた小刀で一瞬の内に生地を等分に切り分け、
「ご苦労さん」と労ったナマエがペローナとそのホロウ達と結託して石窯の方へ持って行く後姿を見送る

布巾で刃の部分を拭っているミホークに、ゾロは呆れたように声をかけた



「……おれの目指してる大剣豪のイメージがどんどん崩れてってるんだがな…」

「フン… 案外家庭的な男、とでも思ったのか?」


ミホークの皮肉めいた言葉に対し、ゾロはヘッと口を斜めに歪めた


「………思ってたより、甘い男だなテメェは」





「おいロロノアー!!一緒に薪運ぶの手伝えぇー!」

「そうだぞゾロー 女の子のペローナだけにやらすつもりかー?」




「………わぁった!!手伝いやいいんだろうが手伝えば!!」

「…………………」

「何か文句あんのか鷹の目ェ!!」

「いや?」



ふっと、ゾロを馬鹿にしたミホークに「お前も来るんだぞミホーク」と言うナマエの声が飛んで来た。「…」無言のままに歩いて行くミホークの背中を追いながら、ゾロは何故か自分と鷹の目の共通点を見つけてしまったような気がした