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「#幼馴染」のBL小説を読む
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失礼ながら、とても滑稽な図だ



何故ならあそこにおわすのは某大企業の社長サマだ
躍進の一途を辿る敏腕社長サマが、こんな民間の本屋に何用だろう。

しかも

 『育児コーナー』


   なんか   に




「  ――駄目だもう限界じゃぶわっはっはっはっはっはっはっは!!」


「………………」









「いや、本当にすまんかった。大笑いしたのは謝るぞ。この通りじゃ」
「まだ図が高ェぞジンベエ」
「これ以上ないっちゅうぐらい屈んどるんじゃが…」



そろそろ往来の人間の視線にも耐え切れなくなって来た。休日の街道の真ん中で土下座をさせられる羽目になるのなら、最初から笑いを我慢してそそくさこの場から逃げ出しておくべきだった。クロコダイルは非常に怒気を露わにしている。右手に袋を抱えて、その袋の中身が、先ほど彼が読んでいた、育児の名付け本で、ジンベエは再度込みあがって来ようとしている笑いを抑える方が大変だった。人の言動を笑い飛ばすような性格はしていない。人を小馬鹿にして笑うのはドフラミンゴの性格なのに、ここでジンベエがもう一度爆笑なんてしようものならこの気難しい性格の友人は一気に機嫌を損ねるだろう。それは出来るだけ避けたいことだ。ジンベエは何とか必死に話題を振った



「も、もうすぐ奥方殿に子が生まれるんか?」
「………丁度今から1週間後が予定日だ」
「そうか、一週間後が……… ん?クロコダイル、お前さん確かその日は海外へ出張に行くとか言うとらんかったか?」
「あ?行くワケねぇだろうがテメェばかか」
「…そうか」



理不尽な言葉を浴びせられてしまったがグッと我慢だ。言葉の端々からと、クロコダイルのその表情を見れば分かる。こやつ、非常に浮き足立っている。「嬉しくてたまりませんが何か」とでも言いたげな顔だ。 冷酷で、無慈悲で、残忍で、利己主義だったクロコダイルが、一人の女に惚れてこうも大人しくなるとは、やはり信じられないことだ。



「ならワシからも何か贈り物せんといかんのう!」
「ンな気遣い要らねェよ どうせまた魚送り付けて来やがるんだろうが」
「いかんのか!?」
「うっせぇ!ナマエが魚嫌いなんだよ!」
「なんじゃと!?」



魚クセェ臭い引っさげてアイツに会いに行けって言うのか!
そう言われてはジンベエは言い返すことは出来ない。

巡回中だった警察官が言い合いをしている二人に近付く「皆様のご迷惑になりますんで、どうか…」 気付けば長いこと此処に留まっていたらしい。ジンベエはクロコダイルの分まで頭を下げ、そして自身も使いの途中であった事を思い出し、口早に告げた



「じゃあのうクロコダイル 良い名前を決められると良いな」
「…ふん」
「ああそう言えば、生まれてくる子はおなごか?おのこか?」



「……女、だ」





クロコダイルが、笑っている

こやつめ、そんなに嬉しいのならさっさと奥方の下へ帰ってやらんか
ああそうか、自分が引き止めていたんだったか






クロコダイルはそこで踵を返した。想定外のジンベエの登場に長く足止めされていたが、今日は早く帰ってやるとナマエと約束していた。胸ポケットに入れていた携帯が小さく震えた。ディスプレイにはナマエの名前が表示されている。
緩む口を引き締めながら、クロコダイルは極力平常の声で「…おれだ」と伝えた