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「#幼馴染」のBL小説を読む
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おれがいまどんな気持ちでいるか知らないだろう?




そんなモノだって、割り切れたら楽だ
割り切れないから面倒くさい
人間の感情は、頭で分かってることに対しても我侭になってしまう
どんどん、どんどん欲深くなって、もっとその先をと欲するのを止めない
そんな自分では、頭の中にいる俺がシクシク泣くだろう
"あの人を困らせるようなことを言うな"って お前は従順に生きていられて羨ましい






「あっ社長!お帰りなさい!」
「ああ」
「出張お疲れ様です。手応えはどうでしたか?」
「上々だ」
「社長!A社からの書類を預かっておりますがいつ頃お届けしましょうか」
「今受け取ろう」
「社長、帰って早々で申し訳ないのですが明日の12時から取締役の方が…」
「ああ、それは後で聞く」



クロコダイル社長が、一週間の出張を終えお戻りになられた

すぐに彼を取り囲むのは仕事の言伝を持っていた者や割り振られた仕事の報告に向かう者から、社長のファンだと言う女社員たちの姿

それを俺は、自分のデスクから見るだけ
「お帰りなさい」の言葉は、後で言えばいい
わざわざ、あの輪の中に入って行く程でもないから






「…―!、…ナマエ!」
「!?」


「おい、何ボーっとしてんだよ? お前宛てに電話入ってるってフロントから」
「あ、ああ」



しまった。
自覚してないレベルで、ボーっとしてたっぽい

やはりこのザマ










先月に外回りで訪れた会社の相手からだった。仕事に関係のなかった雑談も含め、結構な時間を電話に費やしてしまった。今何時だ?げ、もうこんな時間。社長に渡す書類と先ほどの電話の伝言とお帰りなさいを持って行かなくては

自分のデスクに戻れば、席を立つ前まではなかった見慣れぬ白いメモがパソコンの画面上に貼られていた



『1900』


見慣れた筆跡で書かれたメモ 隣の席の同僚が「それさっき社長が貼ってってたぞ。何それ」とわざわざ分かっていることを教えてくれる。教えてやんねーよ



今の時刻は、ギリギリ18時46分 大丈夫だ







「遅ェ」
「結構、早足で来ました」
「フン…… で?」
「これが今すぐサインを貰いたいもので、これは目を通して頂くだけのもの、それとコレはB社からの…」


来る途中でキチンと仕分けていた書類を社長に手渡す。見るなりゲンナリと言うかウンザリした顔になった社長は、俺の前でだけそのポーカーフェイスを崩してくれるもんだから、俺としてみれば優越感がハンパではない
それに、遅いと言われたが今は18時50分 『19時までに会いに来い』と言う社長命令は今回もちゃんと守っている



「出張はどうでした社長?」
「敬語」
「 あーと、出張はどうだったんだ?クロコダイル」
「どうもしねぇよ 狭いホテルが窮屈で仕方なかったぐらいだ」
「クロコダイルはでかいからな。普通のホテルのベッドじゃはみ出るから、やっぱりラブホみたいなとこのベッドんが!」
「黙れ」
「…はい」



どうやらサインをし終えてくれたらしい。ん、と渡された書類をはいはいと受け取る。

手から手へと受け取ろうとした時、ツツ…とクロコダイルの指が俺の手の甲を撫でた



「……帰って来たばかりなんだから、今日はやめておいた方がいいんじゃ?」
「一週間もしてねェんだぞ?ゴチャゴチャうるせェ事言うな、ナマエ」
「…了解だ、社長」
「それでいい」



社長室を後にする。 早く残りの仕事を終わらせて、俺が先に退社する。
その後からクロコダイルが出てくる。バラバラに会社を後にした後は同じ場所へ帰るのだ


誰にも知られてはいけないが、誰かに言いたくてたまらない
クロコダイルはアレでかなり……いや、なぁんでもない、 やっぱり教えない







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