ベビー・アテンション
「昨日な!ゴーカイオーがな!てきのアクマダーたおしてさー!」
「だなぁ!昨日のレッドはカッコよかったわ!」
「やっぱりなー!ナマエせんせなら わかってくれるとおもったー!」
・
・
「せんせー!きょうは あたしとオママゴトしよー」
「えー!やだあたしとよー!」
「はっはっは、先生モテて困っちゃうなぁ!」
・
・
「……ナマエ先生」
「ん?どーしたんだロー君」
「カエル、やる」
「い、いらん!!」
強く拒否してから気が付いた。駄目だ。子どもから渡されるものは例えカエルの死体だろうと蛇の抜け殻だろうと笑顔で受け取って「ありがとう○○君!」と言ってあげなくちゃいけないんだ
「あ、ありがとなー…ロー君……」
「…うれしい?」
「ああっすっげ嬉しい!」
「ふーん………カエルでよろこぶとか、変なの」
「オイ」
オレが受け持っているのは年長さん組だが、
ヤンチャ盛りで毎日特撮ヒーローの話をしてくる男の子や
おままごとのお父さん役にオレを抜擢してくれる女の子がいて毎日仕事しながら癒されるが、
トラファルガー・ロー君だけはやはり可笑しな子だ
「何なんだい?ロー君は先生のことが嫌いか?」
「すきー」
「じゃあ何でカエルの死体とか蛇の抜け殻をオレに?」
「……わたしたら、おもしろい反応してくれるから」
芸人扱い?
「…あのね、先生と遊んでくれるのは嬉しいけど。他の子とも遊ばないと」
いつも1人でいるかオレの隣にいることの多いトラファルガー・ロー君のことを心配してるんですよ先生は
しかもその1人でいるのも大抵カエルや蛇やらを見つけて捕まえてる時なんだけど
「だって他の子たちは子どもっぽいからやだし」
「君、同い年だろ…」
「先生とあそんでるのがたのしいもん」
あー!とらふぁるがー君、ナマエせんせーをひとりじめなんてずるーい!と声を上げて来たナミちゃんにロー君は小さくべーと舌を出した。背後でナミちゃんがすっごい怒ってるが気にしていないこの神経はいっちょ前に大人っぽいぞ…
こんなに好かれた理由は何なのだろう?
いつも最後までお迎えが来ないロー君と遊んでるからか
「あっちいこ、先生」
「いいけど、何したいんだい?」
「……本よんで」
「はは、いいぞー」
まあ、懐いてくれるのに悪い気はしないしな!
保育士として冥利に尽きると言うか、こんなに嬉しいことってないだろう
「何の本読もうか?」
「…"両生類の生態"…」
「そんなの読みたくない!てか何故そんな本が保育所の本棚に並んでんだ!?」