13万企画小説 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


お口にチャック






昔は違和感を持たれつつも受け入れられたナマエは、現代的に言い直せば「コミュ力が足りて」いなかった。
他人と会話することを極端に嫌う、のではなく単に自分の声が嫌いだから喋らない、と言う珍しい理由のせいで余計に他人から興味関心を抱かれる対象となっていた。
しかし、そんなナマエが人間不信にならずに済んだのは、そんなナマエを昔から気にかけてくれる幼馴染がいたからだ





「ナマエーペンギンさんが遊びに来てやったぞー」
『迷惑』
「そう書かずに」



インターホンを連打されていた時から相手がペンギンであることは分かっていた。
この幼馴染は遠慮がない。ナマエの唯一無二の親友は自分だと言い張るこのペンギンと言う男、理由はナマエの地声を初めて聞いた人間だから親友!と決めたのだと言う。到底理解できない思考回路をナマエは数年前から放置気味だ。あまり深く関わっているときっと碌でもないことになる

勝手知ったる我が家のように、ナマエの家の冷蔵庫を開け中からお茶を取り出して飲む姿も許せない。全体的にペンギンは遠慮を知らなかった
ナマエはサラサラと使い込んだスケッチブックの新しいページにマジックで文字を書く



『帰れ』
「そう言うな。今日はこの後、ローさんとシャチも訪問してくるから」
『ことさら 帰れ』
「大勢で遊ぶのって楽しいだろ?」
『そんなことはない』



面倒な性格の自分をペンギンが構ってくれているのは有り難いと思っているのだが、
やはりこう言うところがお節介と言うのだろうか。思い遣りと言えば少しは聞こえも良くなるか?だがしかし、やはりペンギンは遠慮を知らない。何より複数の人間との会話はやりにくいのだ。



「ナマエ、明日の大学2限目からだったよな?」


コクと頷けば、「おれも。一緒に登校しようぜ」と笑うペンギンの笑顔はナマエもまあ好きだと言えた。帽子の陰になって隠れがちのペンギンの目が柔らかく細められているのもまあ許せる。

ピンポーンと間の抜けたインターホンの音が鳴った。しかしやはり、これだけは許せない




「ナマエー!お邪魔するぞー!」
『帰れ』
「門前払いは酷いな、ナマエ」
『…ローさんまで』
「ペンギンから行くって伝わってたんだろ?」
『それとこれとは別です』



シャチはともかくとして、1つ上の先輩であるローには頭が上がらないから困る
ニヤニヤと笑いながら、この2人もまたしても勝手に冷蔵庫の中身を探り出した
もう書いて静止の言葉をかけるのも億劫な。
どうにでもしてくれ…と、ナマエは顔を暗くさせる。
その肩にポンと置かれたペンギンの手も、「この後出かける予定なんだ。勿論、ナマエもな?」と言ってくる姿も、むかついて仕方が無い。もしかすればこの幼馴染は、表面的には友好的だが内面は自分のことを嫌ってるのか?と疑ってしまう


そんなナマエの心の内を読んだのか悟ったのか、すかさず「好きだぞナマエのこと」と言ってくるものだからまあ、諦めて許してやるしかないのだが




prev/back/next