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「#幼馴染」のBL小説を読む
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マジック・ミラー




ウチのローは病院の当直医をしている。確か宿直医?とも言うのだったっけ。よくは知らない
典型的な夜型人間で朝や昼に起きているところをあまり見たことがない。
それは一緒に住み始めてからも同じで、
朝から夜まで家を開けるナマエと、夕方から深夜まで家を出ているローとでは挨拶を交わすのも難しい話だ


最後に会話らしい会話を交わしたのはいつだったか?それさえも曖昧で
隣の部屋で寝ているであろうローに「おはよう」を言って、ローが起きて来た時に食べる用にと昼食と夕食分の料理を作ってテーブルに置いておく。
書き置きはいつものように『レンジで1分チンするように。夕食分は冷蔵庫の中。今夜も頑張れ』とだけ。こんな時の為にと買っておいた壁掛け用のホワイトボードは、何度も書いて消しての繰り返しであちらこちらに汚れが目立っていた










レンジで温め直したチャーハンと味噌汁をかっ込みながら、ローはぼんやりとした眼で16時にやっている討論番組を見ていた。その内容は全く頭に入って来ないが、ナマエが作ってくれたチャーハンの美味さだけはキチンと舌を通して伝わってきている



ガチャガチャと音を立てながら、自分が今使った分の皿と、ナマエが今朝使った皿とコップを洗う。
洗い終わり、乾燥機に掛けたところで洗濯機からピーっと音が鳴った
ローは未だ寝癖のある頭を掻きながら、洗濯籠に洗ったものを取り込み、ヨタヨタとベランダの方へと歩く


ウチのナマエは工事現場で働いている
だから帰って来た時はいつも泥だらけで汗臭い
その姿を最後見たのはいつだったか



「……ねみぃ」


しかし二度寝は許されない
ナマエが帰って来た時にすぐ入れるように、風呂を掃除しておかなくては









「たーだいまーぁー」

泥臭いにおいを纏っての帰宅。
もう夜も20時を過ぎ、ローの姿は既になかった。
しかし綺麗に片付けられている食器と、丁寧に畳まれた洗濯物がナマエの部屋の前に置かれているのを見て、ナマエはローの存在を感じられて笑った
ホワイトボードへのローからの書き置きは、『お疲れ。オカエリ。行って来る』と大事な要点のみが書かれているだけ。いつものことだ


ナマエはホカホカに沸かされていた風呂に浸かろうとタオルを用意する。意外に几帳面なローは柔軟剤を使ってくれるので毎日フカフカのタオルを使える。なんて至福なんだろう



次にローと休みが重なるのはいつになるだろうか。
今夜は夜更かししようか、そしてローを待っていようか
きっとローは怒るんだ。朝早い奴は寝ろって
でもお前と話がしたくてな、と言えば機嫌を良くするんだ





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