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「#幼馴染」のBL小説を読む
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酔い酔い




「えー、では。今月のナマエサンの営業成績がマルコさんを抜かしたことを記念して祝杯で祝いたいと思います。ここでマルコさんから乾杯前のご挨拶を」
「酷くウザい」
「はい、ではカンパーイ!」
「よーい」



帰宅前のサラリーマンたちで賑わう都内の居酒屋。
衝立で区切られたお座敷席に座り、ネクタイを緩め腕まくりをしている中年間近のサラリーマン2人、ナマエとマルコの姿があった


ジョッキの中のビールは白い泡がこぼれ落ちんとしている。快活な音を立て、打ち鳴らしたジョッキを傾け半分ほど飲み干した。
かー!と声を上げるナマエに対して、向かいのマルコはやや疲れ気味の表情で本日何杯目ともなるビールを喉に通したのだった


「廻る居酒屋ごとに"祝杯"されちゃあ敵わねぇよい」
「まだハシゴ三軒目だぞ!だらしねぇなマルコ!」
「お前はちょっとの事でめでたく祝い過ぎなんだい。胃がヤラれんぞ」
「あーはいはい、よいよい」
「お前な…!」
「酔い酔い〜」
「ナマエっ、もう出来上がってんじゃねぇかよい!」
「そう言うマルコさんも真っ赤だぞ〜?」



当然だ。退社してすぐに、ナマエに肩を掴まれ引き摺り回されたんだぞ!とマルコは肩を怒らせた。行く先々で乾杯前の挨拶を求められるこっちの身にもなってみるべきだ。ただでさえノーコメントなところを可能な限り疲れた頭を絞って応えてやっているのを、もう少し感謝するべきだこの酔っ払いは



「ぐははは…このままキープし続けてオヤジさんにたくさん褒めてもらうぜぇ…」
「帰り際社長に褒められたからって調子こいてんじゃねぇよい…」
「あーー…あったまフラフラするなー…」
「これ…かえりどーすんだよい…」



ナマエもマルコもお互い呂律が回らなくなってきた。周りの客は騒々しいし、テレビは絶えず野球中継を流しているし、熱いような適温なような店の室温もあいまってとても眠気を作用される

枝豆をもはや皮ごと食しているナマエのアホヅラをマルコはボンヤリした目で見つめた。机に顔を乗せているので少しばかり顎が痛くなる体勢だ
マルコの視線に気付いたナマエは、「んー…?なに、おまえも枝豆食うか?」と声を掛けてきた。返事をするのも億劫だ。コクンと顔を机に乗せたまま頷けば、しょうがねぇなー…と言いながらご丁寧に皮を剥いた状態の豆粒をナマエはマルコの開いた口に放り込んできた。うん、まあまあ美味い


「…いっつまでこーしてダベってるつもりなんだよーい…」
「頭がシャッキリするまでなー…」
「サッチでも連れてくりゃあもうちっと盛り上がったんじゃないか…?」
「はー?要らんだろサッチはー」
「なんでだい」
「オレとマルコの間に、サッチおよびその他もろもろ要らんわー…要らんいらん…」
「だから…何でいらねぇのかって…あーもういいよい、どうでもいい」


何がそんなに面白いのか。「マルコ、"い"って言い過ぎ」とケラケラ笑ってまたビールのおかわりを頼んでいるナマエはバカなんじゃないか。


「これ以上飲まれたらおれは終電に間に合わないよい」
「オレん家泊まれば良し」
「酒臭いまま同じスーツで出社すんの嫌だぞ…」
「ファブリーズしてやるから」
「いらねー」


結局、マルコは二軒目の時点で既に出来上がっていて、最後はナマエにおぶられながらナマエの家に行った事は朝目が覚めた時に気がついたことだった



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