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はだしの優等生さん




「君は真面目な生徒だなぁ」



教授が言うほどルッチは真面目な生徒ではない。
不純な理由で今も二浪している最中だ。



今日の講義も素晴らしかったです。ルッチがそう切り出せば、教授はありがとう。と笑う。いつも自身の講義で必ずと言って良い程最前列に来て聴講してくれるロブ・ルッチのことを教授が記憶したのも2年前のこと



「あー…ルッチ君、確か君の友達にジャブラ君がいただろう」
「友人ではありません」
「そんな即答しないで。あの子に君の爪の垢を煎じて飲ませてやってくれ」
「お断りします。おれの体の一部をあの男に分けるのは苦痛です」
「そうかい?それなら仕方ないな…あの子も、君ぐらい真面目にしてくれればいいんだけどねぇ…」



あぁやれやれどっこいしょ。40後半にしてその掛け声はどうかと思う。そう言いたげなルッチの眼差しに悟ったのか、教授はエヘンと咳払いした。ルッチが誰よりも先に提出したレポートを手に持って講義室を後にする。それにルッチも何となしに続いた。



「ルッチ君、今年には卒業する気はあるかい?」
「…いえ」
「単位の修得だけなら誰よりも早いのに…卒論を蹴る理由はなんだい?」
「……教授には、お伝え出来かねます」
「僕以外の者には教えれるのか?」
「いえ、それもないです」
「そうか…うーん、まあ君の人生だからね。僕がとやかく言うことではないよね」



広い構内には夕陽が差し込んできている。放課後のサークル活動に勤しむ生徒の姿がチラホラと見え、購買の自動販売機の前にいた生徒がルッチの姿に気付いて手を振った



「ルッチー今終わったんかー?」


「…カク…」
「ああ、あの子もルッチ君の友達だったね」
「…友人ではありません」
「うーん、ならもう少し交友関係を築くべきだねルッチ君」



こんな時間まで講義室で何しよったんじゃ? 好奇心で問うて来られるのは好きではない。近寄って来たカクに一瞥くれる。「…お、お邪魔だったかのう」よく分かっているじゃないか。邪魔だ



「カク君 君もだよ」
「え、ナマエせんせ何がじゃ」
「君もルッチ君の爪の垢を飲ませてもらいなさい」
「うげ…それは遠慮するわ」
「こっちも願い下げだ」



じゃあお友達も来たようだし、ルッチ君も気をつけて帰るんだよ。

手を振るナマエ教授に、ルッチはもう少し、と希ったがやはりそれは口には出来ない。
「…さようなら」と返すのが精一杯で、後はその背中を見送るだけだった



「……ルッチ、もしかしてワシは物凄く」
「邪魔をした」
「や、やっぱり…す、すまん!お詫びにちぃとジャブラにワンパン入れてくる!」
「ツーパンぐらいしてこい」
「了解じゃ!」



ルッチが母校であるこの大学でナマエと同じ立場になる為には、後もう少し年月が要る。
それまでは、あともう少し教授の講義に耳を傾けていたいのだ。


とりあえずルッチは走って行ったカクの後を追う。ジャブラへ直々に八当たりしなければ、カクに任せたぐらいでは許せなかった







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