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なにこれひどい





「ミホーク、お放し。 いい子だから」
「…無理」
「でもこんな体勢だと危ういから」
「………」
「……邪魔だから離れろって言ってんだよダァホ」



オレの腰に手を回し、床に寝転んでも海老反り体勢になってもその手を放さないミホークが果てしなくお邪魔虫だ。


ボサボサの髪は洗われるだけで梳かれはしないし、
口髭は手入れされるが顎鬚に頓着しないせいで伸びっぱなし
着ている服は何日も目にしているから多分着替えてないし洗濯されてない。
ミホークめっちゃ汚い



「…なあ、ミホーク 働けとはもう今は言わないから、せめて人間らしい生活を覚えろ」
「…………最近、」
「あ?」
「…ドライヤーの使い方を覚えた」
「………よくやったぞミホーク!凄い進歩!」



しょうもない。とか言えない。ミホークが家にある家電の使い方を覚えたのはこれで3つ目だ。1つはテレビ、1つはエアコンディショナー その次がドライヤー。何そのチョイスと言いたい。
自堕落な人生を地で生きる気まぐれなミホークの思考は今も昔も理解出来ないままズルズルと縁を切らずにここまで来ていた



ミホークは、世間様が思うほどご立派に生きてきたワケじゃない。
七武海となりその名が馳せたあの頃だって、ミホークは面倒くさがりの生活レベル0人間だった。どうやって生きてきたんだろう…と疑問に思う毎日だったのも懐かしい。


だがまあ要するにつまり見た目がイイ奴はどんな奴だろうと人生得しかしないって話だ。
爆ぜろ、爆ぜてしまえ



「……今日も炒飯か」
「何だ。ナマエ様のお手製チャーハンに文句あんのか」
「ナマエの作る料理は美味しいから好きだ」
「褒めても別にカラアゲとかつけねぇかんな!あるけど!」



――昔付き合っていた女は料理が下手だったりメニューが偏ってたりする者達ばかりでウンザリしていた



とミホークからのオイオイな発言を聞いたところでオレは何とも思わんのだが。



「………あー、何はなくともミホーク そろそろヒゲ剃ろうか」
「…?」
「オレの手にジョリジョリ当たって痛いから。ちょっと待ってろ」
「ナマエ…?」
「洗面所行くだけだから!手ぇ放せ」


どうしてそこでミホークが渋々…みたいな表情だ。解せねぇ


「おら、上向け」
「んー…」
「ゴッワゴワじゃねぇか。何日剃ってねぇんだよ」
「ナマエが前にしてくれた時から触れていない」
「ばっか野郎」


自分の髭だろ面倒見てやれよ!

オレの言葉に素直に従い大人しく上を向いて顎を差し出すミホークにはほんと溜息も出尽くしたわ
そうやって目を閉じて静かにしてる姿は、世の女性を虜にしてしまいそうな美丈夫のくせして内面がダメダメとかギャップにもならんぞ



「…いいか いつまでも他人任せにして生きられる程人生ってのは甘くはねぇ」
「………ほう」
「いい加減、仕事に就くってことをしろテメェは」
「……だるいんだ」
「そんなキリ顔で言っても駄目だぞ!!」



そうやっていつまでも一日中ダラダラしてばっかりいたら心はやさぐれるし筋肉は衰えるし社会的に忘れ去られるんだぞ気付け!「ナマエがいてくれればいい」とか甘えたこと抜かすな!

とりあえずチャーハン食ってからギルド行くぞ!は?ギルドってのはハロワのことだろうが。あそこは職を探し彷徨う勇者に救いの手を差し伸べる協会だと思え
黒刀…じゃなくて武器も持てない今のミホークじゃ無理だと思うが……ってのは思っても口には出さないでやろう





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