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持ち上げて落とす為の優しい掌






ナマエは言う「人間ってねぇ、素晴らしいモンなのだよクロコダイル君!」
クロコダイルは言う「死ね」
ナマエは言う「会話のキャッチボールがマイナス点だねぇクロコダイル君は!」



可哀想にねぇ、かわいそうにねぇ!クロコダイル君!
一回死んで記憶を保持したまま二回目の人生へ突入したって言うのに、欲と疑惑に塗れたドス汚いこの世界に嫌気が差してすっかり人間ってものを信じられなくなっちゃってるんだよ!前の世界だって変わらないぐらい汚かったのに!自分もその君が嫌いな人間なのに!気付いてないんでしょう?前の君はとっても頭が良かったけど今はとんとおバカさんになってしまったからねぇ!可哀想に、可哀想に!でも安心をし。僕はコレでも好きな人にはとびきり優しくしたい紳士だから!人間嫌いになっちゃった君の傍に僕はいてあげる。ずっとずっといてあげるよ?ねえ、嬉しい?



「ああホラそんなに泣かないで!可愛いお顔が台無しだよ!」
「泣いてねぇ。テメェの目は硝子玉か」
「わあ!そんな綺麗なモノで僕を例えてくれるなんて嬉しいよクロコダイル君!」



透き通っててキラキラしてて、綺麗だよね硝子玉って!そうかぁ、僕の目はクロコダイル君にとってそう言う風に見えてるんだね!一気に僕の眼球がとても可愛らしい部位に思えてきた…って違うちがう、今はそう、クロコダイル君のことだね!僕なんかのことはどうだっていいんだよ!



「でもそうだねぇ、信じられない!って言ってる可哀想な子に人間信じて!って言っても無駄だし押し付けがましいし鬱陶しいよねぇ?」
「…既にテメェが鬱陶しい」
「もう、いっか」
「あ?」
「やっぱりもうイイよね? クロコダイル君、君はこのまま一生人間と言う存在を信用できずに生きていけばいいよ! 会社の契約を一方的に破棄されて傷ついてるんだろ?多大に物資を供給してた支部の社長が倒産して夜逃げしてビジネスが滞ってしまったんでしょ?信頼してた部下に毒盛られて殺されそうになったんでしょ?死にかけたんでしょ?そのリハビリに掛かった莫大なお金の一部を抜き取られてしまったんでしょ? ならもう良いじゃない!信じなくても!」
「……さっきと言ってることがまるで違うな」
「言葉ってのはねぇ、一刻一刻と移ろい行くものなんだよ! 可哀想だ!実にクロコダイル君が哀れでならない!」



でも大丈夫だよ安心してくれていいんだよ

「僕がいる。クロコダイル君には僕だけがずっとずっといてあげるんだ。僕なら信用してくれるでしょ?だってこんなに君の事を愛してるのは僕だけだもんね?クロコダイル君だって僕のことが好きでしょう?あ、もしかしてまだ腕が動かない?えげつない毒を盛られちゃったんだねぇ。かわいそっ!でも絶望することはないよ?君の治療費は今後僕が全額支払ってあげるから。ね?そうすれば君は僕のことを要らないって思えなくなるでしょ?愛しくなるでしょ?僕って人間が愛おしくなるでしょう??」



呪いのように呪文のように洗脳するように言い聞かせるように刻み込むように分からせるように知らしめるように教えるように伝えるように響かせるように紡ぎ出すように繰り返すように


他人を信用しない君の精神を内側から瓦解させるように愛の言葉を言い続けて何十年目とプラス二度目の人生分合わせてさぁ一体いくつになるだろう?




「……言ったな、ナマエ」
「うん」
「テメェはおれを裏切るな」
「うん!」
「何処へも行くな。おれを信用させ続けろ。愛することを止めるな。勝手に何処かへ行こうとするな。音もなく消えるな。おれの望まないことをやるな。おれを弱くさせるな。お前はお前のままでい続けろ。何よりもおれを優先しろ。他人に靡くな。おれが良いと言うまで近くにいろ。おれを殺そうとするな」



「いいよぉ」




僕と君だけの約束だねぇ、クロコダイル君






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