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「#幼馴染」のBL小説を読む
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水がないので渇いちゃう




今のおれにどれくらいの価値がある


クロコダイルはいたく不機嫌に、誰ともなしに尋ねた。いや、誰ともなしとは言ったがその"誰か"とはクロコダイルの目の前に座り顔をこれでもかと「??」で一杯にしている問題の渦中の恋人に充てているので間違いはない



愛し合っていた恋人と生まれ変わっても出会えて愛しあえればそれがハッピーエンドか?馬鹿馬鹿しい。そんな簡単に上手く事が運ぶ筈がないんだ。そんな考えを抱けるのは、温室の中で育った人間だけに過ぎない



今の自分にはこいつ…ナマエを縛り付けておける程の力がない


クロコダイルがこの世で得た物は、
社会的な地位と金と名誉だけ。
付け加えるならそこにナマエもだろう。
前者は実力で勝ち得た物だが、ナマエは違う。アレは恋人だったから

生まれ変わって、出会って、「クロコダイル!?」「ナマエ、」とお互いを確認し合って、ならば、とまた元の鞘に首尾よく収まった、それだけで、それ以外に決定的な理由も根拠もない



つまり要するに、



「今のクロコではオレに捨てられるかもと?」
「…口に出せたァ言ってねェ」
「すまん、つい口に出しちまった」


あんまりにも可愛らしい事でお前が悩んでいるから



ナマエはいつも人を莫迦にしている。
このクロコダイルを捕まえておきながら、「かわいい」などと言う虫唾が走ることを言ってくるし、第一に他人の赤裸々な悩みを口に出しておきながらその反応は何だ。やはり莫迦にしているとしか思えない


目に見えて不快感を露わにし始めたクロコダイルに、ナマエは慌てて言葉を付け加えた


「クロコ」
「…何だ」
「今のお前もなかなかに強面なツラをしているが、中身は前より柔らかくなったな」
「……干すぞテメェ」
「もう出来ないだろ、それは。
…あぁ、ソレが嫌なんだっけか?」
「……」



言い当てられてしまえば言い返せない

力で脅し、屈服させていたつもりも無かったが、それは自分の意識のみが関与するところだ。実際のところ、ナマエ本人からしてみれば脅されて止むを得ず付き合っていたのかもしれない


口に出すのも憚られて押し黙っていると、
またも何とも不名誉な言葉を被せられる



「おバカさんだな オレのクロコは」
「…!? テメェ…何…」


言うに事欠いて莫迦だとお前に言われる筋合いはない!

と、口に出して罵ったつもりではあったが、意思とは反対に口はそれ以上動かない



「別に、"言うことを聞いていないと殺されるやも"、なんて思いながらお前に連れ添っていた。なんて事実はない」
「……」


どこを探してもだ、心配するだけ無駄だぞ。そう言ったナマエはおれの許可もなしに顔へと手を伸ばして来る。振りほどいてやっても良かったが、わざわざ拒否するのも億劫だっただけだ


「イマイチ信じてくれてない顔だな」
「…当たり前だ。おれだぞ」
「そりゃそうだ。 オレが惚れた、警戒心が強くて他人に一切心を開かないクロコダイル殿だもんな」


そこが好きだからオレは惚れたんだぜ、
なんて言葉をやすやすと信じられるような脳には出来ていない。
飽きたなんだ、棄てられるだなんだと言う、女々しいことなら思いつき考える頭のくせに、そこだけは一切頑として譲らないから参ってしまう。自分の頭のことなのに、だ


「不安に思うことはないし、生まれ変わってまた恋人になれたことを馬鹿馬鹿しいって言うのもやめて欲しい。絶賛大喜び中なのがオレ一人だけみたいで孤独を感じる」
「……このすかたん。頓痴気」
「言葉のチョイスにやはり年代を感じるな?」

「このままおれを選び続けたことを後悔したって遅ェからな」
「応ともよ」




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