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じきに君を喰らう春が来る





うちの近所に住んでいる男の子が言うには、どうやらオレは彼の「うんめいの人」らしいのだ。
男の子とは言え小さいとは言え、誰かからそう言う好意をモロに示されている言葉を貰うのはやはり嬉しいもので、例えオレが「ありがとな〜」とその男の子相手にデレっとしたとしても、ショタコンを疑われたり変質者だとは思われない筈だ。世間はそこまで風当たり厳しく出来ていないと信じたい





「ナマエ」
「おぉ、と思えばホークか。久々だなー」
「15時間前にもあった」
「昨日の夕方にな。 それでどうした?どっか遊びに行くんだったか?」
「ナマエの家にいこうとしてた」
「ありゃ、そうだったのか。でもオレは今からスーパーに買い物行かなきゃならんのよ」
「つきあう」



オレの財布を持ってない方の手をギュっと握ってきたホーキンスに、ははーん?とニヤける


「さてはお前、オレのおこぼれに預かろうとしてんな?」
「ちがう。ナマエと一緒にいたいだけ」
「そうかそうか。まぁそんな可愛いこと言われちゃあ断っちゃ駄目だな」



握られてきた小さな手を握り返してやると、近所の男の子――ホーキンスはにまぁと笑った。うん、子どもにしては少し陰のある笑顔だがいじらしいことに変わりはない!子どもにしてえらく握力の強いホーキンスはギュっと力を込めて手を握ってくるがそんな事は些細な問題だ!



「ナマエ、恋人はできてないよな?」
「…おう、相変わらず面白いほどモテないぜ…ははは…」
「そう、それでいい」
「よかないぞ!」
「いいや、それでいいんだ」



「ナマエはおれのうんめいの人だから」
ホーキンスのお決まりの台詞だ。会う度に恋人の有無を訊かれてからのこの言葉
オレは今も昔もずっとこの言葉はホーキンスの戯れか遊びだと思ってるんだが、
年々ホーキンスのこの言葉と表情に信憑性と真剣さが見え隠れし始めてきていて、
どうしようかなって思ってるところだ。最近じゃ、オレに恋人が出来ないのはホーキンスのせいなような気がしてならないんだがきっとそんなワケない。よな?



「ナマエ、もう少しまって」
「何をだ?」
「あと少し大きくなれば、大叔母様がおれに呪術の伝承をおしえてくれるから」
「じゅ、呪術…!?」



隣を歩く男の子の顔がにやぁりと笑うので、
「あ、危ないことはするなよ…」しか言えず寛容してしまうオレが、
ホーキンスのこの少しズレた性格の成長を促している諸悪の根源のような気がしてならない




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