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「#幼馴染」のBL小説を読む
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あなたにはわからない




*記憶がない主人公と、記憶があるシャチと、ロー
*シャチがかわいそう


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おれはおれに、毎日ちょっとずつ死んでいく呪いをかけたんだと思う
それなら、毎日キツく縮み上がるこの心臓への攻撃の理由にもなるだろう
ズキンといたい。懐かしい痛みだ。何度も何度も感じたことのあるモノ。ずっと慣れなくて、毎日キツかったのを覚えてる。いやそれは今も同じで、ちっとも治る気配がない。治るはずもないのだ。おれみたいな男なんかが、横入りを狙い、略奪を企てる、性根の捻じ曲がった、おれなんかでは

嗚呼その横顔が愛おしい・おれに向けられていない横顔が恋しい・あの時の温かみをまだ覚えてる・覚えてる・覚えてる・おれは、ぜんぶ、ずっと、覚えているんです




「…シャチ君、シャチ君」
「――あ、はい?何ですか"ナマエ"さん!」



少しボーっとしてた。思考に埋もれてた。それを呼び覚ましてくれたのはナマエさんで、いや、新しいナマエさん、って言うのが正しいのか?ナマエさんはナマエさんだけど、記憶がないからナマエさんとは言いがたいけど全部が同じだからやっぱりこの人はナマエさんなんだ。で、そのナマエさんがおれに何の用なんですか?さっきまでキャプテ、…ローさんとお話してらっしゃったのに
3人で大型ショッピングモールに来たこと自体は楽しかったけど、お二人はお二人だけで会話することが多かったから、ちょっと寂しかったんですよおれ!




「…あれ?ローさんは何処行ったんですか?」
「トイレに行ったよ。…なぁ、シャチ君 悪いが相談したい事があるんだ」
「!は、はいっ 何ですか!?」



なんて事だ!ローさんはいなくて、おれとナマエさんが二人きりで、しかもナマエさんにおれが頼られた!いつもその役目はローさんに回されるのに!おれに!
はしゃぎ過ぎておっきい声で返事をしてしまった。ナマエさんに苦笑され「…もうちょっと静かにな?」って諭された。やばいキュンときた、しにそう



「す、すみません… そ、それで?」
「うん…その、言いにくいことなんだがな?」



ナマエさんがヒソヒソと声を潜めて、顔を近づけてきた。わあああ近い、ちかい、ちかい! 誰かおれに落ち着きをくれ、




「………ローは、さ …オレのことが、その…好きだと思うかい?」



………???




「……嫌っては、ないと思いますよ、ぜったい」
「そうか?…そうかな。そうか…」
「……な、んでそんな事を?」
「いや…その、な 事前リサーチ、と言うべきか」
「事前リサーチ?」
「………その…、こんな事を言ってしまうのもアレなんだが……アイツを、好いてしまってな」




みしり、
ああまただやっぱりしょせんうんめいとかそう言ったものはぜんぶおれには向かないことになっているんだ




「……なるほど」
「嫌われていないのなら、見込みはあるのかな」
「だって…ナマエさん、ですよ?あのキャプテンが、ナマエさんのこときらいになるワケないんですよ…」
「キャプテン…?」



知らないでしょ?ナマエさん
ローさんがキャプテンだったことも、海賊船の船長やってたことも、おれとナマエさんもキャプテンの下についてたことも、たくさんキャプテンから聞かされてたナマエさんとちっさいキャプテンが過ごしてた頃のことも、恋人同士だったことも、なんにも知らないんでしょ?
なのに、なんでもう一回なんだよ。どうしてそうなるんだよ。何も知らないままのナマエさんならおれもキャプテンと同列のスタート切れるんじゃって期待した結果がコレらしいぞふざけんなどうしておれじゃ駄目なのか理由を言ってくれ。人間性か?外見か?内面か?顔のパーツの配置のせいか言葉遣いか行動か頭の良さか思慮深さか精神の造りか他人の幸せを笑えず自分の不幸ばかりを嘆く心の弱さか愛情の深さか前世の縁か




「……お二人なら、ぜってー幸せになれますよ……」
「ありがとう。そう言ってくれるか。シャチ君に相談してよかった。自信を持って伝えられそうだ」
「…はは…、ローさんは素直じゃないんで、根気強く思いの丈をぶつけてくださいね…」
「ああ、知ってるよ。 ――前も、そうだった」



………ん?前?…前って何の話だったんだ?








おれはおれの心臓を、毎日殺していく呪いをかけた
こんな想いは早々に消しておいた方がいい。キャプテンが戻ってきた。これから自分の身に何が起きるのか分かってない顔をしている。
ナマエさんがキャプテンの手を取った。聞かせたい話があると。横目でおれを窺ってきたナマエさんの気持ちを汲もう。おれは早く空気を読んで立ち去るのがいい。こんな感情を抱いてしまっているおれは今後お二人の邪魔にしかならない
ナマエさんが幸せならおれも幸せです。そんな男前な台詞が吐けるような、おれだったら良かったのに。そうすりゃおれも傷つかずに済むと言うのに





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