校内でポイ捨てをするなと言っても、する奴はするし、しない奴はしない。
全くもって情けないことこの上ない。
やがては人々の為のヒーローってやつを目指している筈だろうに、雄英高校随一のトップ清掃員であるナマエさんをただ今大いに困らせてくれちゃっているとは何事だ。特にどの学年が一番ポイ捨てをするかと言えばどうとも言いがたいが、ピカピカの新入生諸君らがポイ捨てするとかマジいい度胸！校内の随所に配置されてあるゴミ箱が見えないんですかねぇ！今度教育委員会の連中に『ゴミ箱の色をより目立つレインボーカラーにしたい』って掛け合ってみるか。いやこれもどっちにしろ、先述のようにどうやっても「する奴はする」のだ。まずは根本的なところから解決しなければポイ捨ては根絶しない。生徒たちに分からせるためには、まず何をすればいいか？決まってるな、偉い人間からの圧力だ。
「曲がりなりにも担任なんだったらそこんとこの教育もしっかり教えこんどいてくれませんかねぇ相澤先生！」
「…………」
「ぅおおーい！無視すんな！寝袋に入るな！」
閉められる寝袋のファスナーを開けて、また閉められては開けるの繰り返し。
そうすることでようやく頭頂部だけを見せた相澤先生は恐ろしく低い声で「…煩いんですが、ナマエ清掃員」と俺の名を呼ぶ。初めて出会った時はローテンション状態の相澤先生にビビってたが、今はそんなことはない。尻込みせずにガッツを持って挑めばダメージは食らわないと学んだんだ俺は。
「相澤先生んとこの生徒さんが、こないだ空き缶をペットボトル用のゴミ箱に入れてるの見たんです！しっかり国語の授業つけてやってくださいよ！」
「………………」
「はぁ！？くだらない、とは何ですか、くだらないって！」
「何も喋ってません」
今日も大食堂でランチラッシュさんと一緒に溜息吐いたものだ！「困りますよねぇ」「ええ困りますなぁ」って言い合いながら、返却口に返されず机に置きっぱなしになったトレイを片付けてた！ってこれはポイ捨てとはあんまり関係ないけど。って、相澤先生聞いてねぇし！ファスナーまた閉めて完全に布団の虫状態化してたし！俺の話は基本的に聞いてくれない人だが今日は一段と聞いてくれなかった。やっぱり話題が新入生徒が絡んでる話なんで耳にするのも面倒くさいんだろうか。
「………」
けどだ、俺だって、雄英高校の一清掃員として目先の問題はしっかりと解決しておきたい。
その為には相澤先生の助力が少し必要なのである。
「……"相澤消太"！」
「――！？ な、おい、重…っ！なにし、」
芋虫状態の相澤先生の上でマウントポジション。多分腹の上だかに乗っかっている。さっさと済まさんと後が怖いな。
「HRとかの時間にちょっと提言してくれるだけでいいんだ、『ゴミはきちんとゴミ箱に棄てるようにって』」
「いう、言う、だから上から退け…！」
「絶対だな？」
「わ、分かった…」
「ありがとうございます」
寝袋の中からゼーハー、と言った荒い呼吸音が聞こえてきた。「分かった」と言ってくれたから、相澤先生はきちんと言ってくれるだろう。これで多少は案件が減ってくれると有り難いんだが。
寝袋のファスナーがゆっくりと開く。予想以上に拘束が苦しかったのか、いつにも増して相澤先生の表情がげっそりしている。睨んでくる。こわい。瞬き一つせず睨まれてる。あ、これ今の俺丸裸状態や。
「……ナマエ清掃員…」
「…い、いやぁ相澤先生…ドライアイお辛いでしょ？そろそろ瞬きしてもいいんで…」
「…………」
「ま、ばた、き………」
「半分ぐらい死んでください」
ああー首の包帯さんが勢いよく俺の首に巻き付いてきましたーーー
―――――――
＠終わった後のどうでもいいキャラ裏設定
ナマエ ２０代前半
・数ヶ月前から雄英高校で清掃員として働いている。給与はそれほど良くないのに仕事量は多いのでポイ捨てとかされると仕事増えるじゃんかおこ。なのでポイ捨てを見つけると機嫌が悪くなる。それ以外の時は能天気なバカ。
・昨年相澤消太が行った『一クラス丸々除籍処分』の生徒の中に溺愛している妹がおり、「立派なヒーローになる」という妹の夢を無惨に打ち砕いた相澤に復讐したがっていた。
が、それを知った妹が「また次に頑張るから大丈夫だよお兄ちゃん」と説得したので復讐やめた。それに話してみると意外と筋の通った考えを持ってるいい先生だった。
・個性は『人名掌握』
相手の本名をフルネームで口にすると３０秒間だけその相手の全支配権を得る能力。「今すぐ自分の舌を噛み切ってみろ」と命令すれば相手はそれに従わざるを得なくなる。対一人用なので複数人と対するには不向きな能力。あとフルネーム知らない相手には無能になる
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