▼冒険者設定
「おら、『キー!』って泣いてみろって、なあ」
『や、やめてよマスタァ!ぼく、そんな風に泣いたりしないもん!』
「あー?けど現に今泣いてんじゃねぇか」
『マスターがいたいことするから!』
痛いこと?頬っぺた抓ってるだけじゃねえか。
相変わらず俺のヴァンパイアは泣き虫だ。暇つぶしに入った暗い洞窟ダンジョンで泣いていたのを保護してからずっとこう。変わらない性格ってのは美学だが、それは場合にもよる。こいつの場合、男のくせに泣き虫おじみそなのは頂けないぞ。
「泣いてばっかいるなって。暗がりが怖いとか、ヴァンパイアとして致命的すぎんだろ?」
『だ、だってぇ…』
「だからちったあ度胸付けねぇと駄目なんだよ。だから行って来い、魔王の城に」
『やだよ!無理だって!怖いよ!キー!』
「あ、キーって言った」
『うわあああん!』
やれやれ、こいつにも困ったものだ。
うちの70になるじっ様が言うから、情が移ってしまう前にこいつを早く一人前の魔王ヴァンパイアロードにして手放さないといけないのに、こんな調子じゃこの泣き虫が魔王になるのには、あと何年必要になるんだか。
「わーかった。じゃあまた後日に回すから。な?だから泣き止めって」
『ぅ…っ、ほんと?マスタァ…』
「ああ、ほんとホント」
『うん…っ!マスターだいすき…』
嬉しくねぇ。
俺のことが好きだとか言うんなら、早いとこ一人前になってくれ。
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