頼んでいないのに、今日の朝もガーディは表のポストから朝刊を銜えて持って来てくれた。
「………ありがとう」
『ガウッ!』
ご機嫌な遠吠えが上がる。
これはまたご近所さん方にうるさい迷惑をかけているだろう。吠えないでくれ、と幾ら頼んでみてもこのガーディは理解してくれないのだ。
小首を傾げて、俺の言葉の全てを"無視"する。
新聞を取って来なくてもいいこと、
煩いから吠えないでほしいこと、
抜け毛が酷いから走り回らないでもらいたいこと、
俺は、お前を飼えないこと。
ああまったく、人間の設置した罠にかかっているポケモンを、軽率に助けるんじゃなかった。
一目惚れよろしく好かれてしまい、毎日こんな現状だ。
「…なぁ〜頼むよ…俺はトレーナーでもないしブリーダーでもないんだ。しがない貧乏町人Aで、自分一人を生かすのに精一杯な毎日しか送れてないから、お前を飼う余裕は……」
『ガウバウッ!』
「お願いおれのはなしをきいてー……」
座って朝食を食べている俺の膝に乗っかって、ガーディはそれはもう楽しそうに尻尾をフリフリとしている。
なまじ今が寒さ厳しい冬の朝なだけに、このモフモフっぷりはとても罪深いものがある。ほだされそうふみとどまれおれのみぎてだめだそっちはもふ
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