故郷グランザークを飛び出し一人旅を始めて早半年。
それなりに冒険者としての知識や格好が身に付いて来たかなと自信がつき始めたところに、早速の死亡フラグが立った。
「………、………」
もう、喋る気力も ない。
私の憧れの場所でもある『ドワーフの村』へ行こうと長く険しい坑道を歩き、村まであともう少しのところへ来てモンスターの群れに襲われた。
私は戦えない。だからいつもはモンスターとの接触を避けて行動する癖が身に付いてある。だけど、一匹、二匹、五匹、七匹……あれほど多くのモンスターに一度に向かって来られたことがなく、一気にパニックに陥ってしまった私はドワーフの村までの正規のルートから外れ、右に左に逃げ惑った。その結果が、
「………だれ、か……」
迷子からの遭難、そして食糧の底尽きである。
坑道内の硬い地面に倒れこんで意識が朧気になってからどれくらい時間が経っただろう?腹の虫が鳴きまくる以外には、遠くの方で鳥獣系のモンスターが鳴いている声や、狼たちが遠吠えを上げているのが聞こえるだけで、人の足音なんかは全く聞こえない。
ああ、私は此処で死ぬんだわ。
ごめんなさい、天国の母さん、父さん。
娘ももうすぐそちらへ向かいます――………
『あら、こんなところに人間の死体』
……なんだろう、今、誰かの声が……ううん多分幻聴ね。
期待したって絶望するだけだよね、そうに決まって……
『どうしてこんな道の真ん中で死んでるのかしら。邪魔すぎ』
……………………
「………幻聴じゃない!!」
『うわビックリした!!』
聞こえた確かに聞こえた女の人の声!
最後の最後の力を振り絞って顔を上げてその天よりの助けである存在を目に留める。
そこにいたのは、小柄な………
「………ゴ、」
『なんだ死んでなかった』
「ゴーレム…!!?」
――ドワーフの村へと続く坑道で出会った天よりの助けは、小型の女性ゴーレム「ルナティエ」だったのです。
その後私は何とか説明と経緯を話し、本気で嫌がっていたルナティエから彼女が後で食べようと思っていたスイーツと飲み物を分け与えて貰い、あまつさえ、厚かましくもお願いをし、小柄な彼女に引き摺ってもらいながら目的地であったドワーフの村へと運び込まれ、そしてルナティエを作ったと言うゴルバンさんに手厚く介抱をしてもらい、
『アタシのスイーツを腸に送り込んだ罪は重い。罰としてアンタの残りの生涯はアタシの下僕として生きなさい』
と言う命の恩人からの命令により、私、ナマエは今日も元気にルナティエに罵られながら、ドワーフの村で元気にやっています。
お父さん、お母さん。
私、ルナティエと出会ってから、毎日が楽しいです。
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