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「#幼馴染」のBL小説を読む
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男性型アクセサリ


体験版の内容だけで妄想した話になります





俺はどうやら"また"記憶喪失になったそうだ。

"また"と言うことは、これが初めて体験する事象ではないことが分かるが何分その覚えさえもないので実感が湧かない。先の任務で引率してくれた『ウーヴェ』なる大男が「催眠学習」がどうのこうのと言っていたけれど関係しているのだろうか。分からない。分からないことだらけだ。滑り止めの付いたトタンの床に、染みやカビがかたくこびり付いている壁、そして一際目を引く巨大モニターのある狭い個室……いや"独房"と言い換えるべきか。独房に連れて来られてから時間がいくら経ったのかも分からない。時折巨大モニターに映し出される『1位 東京』『2位 神奈川』などの文字は何を意味している? ずっと入り口の前に突っ立って微動だに一つしない『アクセサリ』に訊けば答えて貰えるのだろうか。いや油断は禁物だ。何せ以前に再教育ボランティアへの質問とは関係の無いことを尋ねただけで懲役20年を食らわされたんだから。本当にどうかしてる。5歩以上歩けば懲役10年、横になって寝るのは禁止、実行すれば懲役10年 俺の頭の上に浮かび上がっている数字は今いくつになってるんだ?
生憎、今は確認する気力がない。
再教育ボランティアのTとUを終えてすぐに『サ1-4号相克作戦:市民奪還』なるボランティアへ向かわされて、アクセサリ曰く『バイタル値が低下している』らしいからな。じゃあ俺は今なにをしているところかと言うと、休息を取れと言われたから言うように汚い寝台に横になったところへ処罰が下されて懲役10年を貰って仕方なしに座ったまま寝ようと試みているところだ。非常に寝苦しくて、本当にこれで次目覚めた時に疲れが取れてるのかが甚だ疑問である。アクセサリの野郎はずっと俺の方を監視したままだし、いくら人の形をした生体アンドロイドと言えどこの部屋に監視カメラが3台あることと同じじゃないか。本当に、薄気味悪い存在だアクセサリと言うのは。「プロパ君」が言うには、俺が記憶喪失になった時のボランティアで以前俺を監視していたアクセサリは破壊され無くなったのだと。全くそれらを覚えていないせいで、以前の俺はどうやってこのアクセサリと上手く付き合えていたのかも不明だ。
色素の薄い肌に、生気の感じない唇の色もそうだが、左右で色の違う目が機械的に動いているのもおっかなく感じられる。せめて、女性型のアクセサリを希望した方が良かったかな? だけれどなぜか、『アクセサリの基本容姿』をプロパ君に訊かれた時、脳裏にぼんやりと一人の男の姿が思い浮かんだのだ。背の高い、後姿が。そう丁度、このアクセサリと同じような…って、同じなのは俺がわざとにそうしたからなんだが。


「休息する」と宣言した俺がいつまで経っても目を閉じて眠らないことに痺れを切らしたのだろうか? ずっと黙っていたアクセサリが口を開いてきた。


『ナマエ 今のあなたには休息が必要です。速やかに休息を取って次回のボランティア参加へ備えてください』
「……」
『休息を拒否する事は禁じられていま…』
「あー分かってる、分かってるって」


正直このアクセサリにどこまで軽い口調で行っても大丈夫なのかも分からない。アクセサリが俺の言動に『無礼だ』と感じたら懲役10年、とか言い渡されそうな気がするんだ。
だからあんまり、こいつと会話したくない。



「…………」
『………』


二台の監視カメラが一定の間隔で動く音と、アクセサリから聞こえる駆動音みたいなのがやけに気になってしまう。しかも寝台に座っている俺の前には青々とした光の眩しいブルースクリーン。こんな状況で、どうやって寝ろ、と?




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