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清少納言


ミタマと言えど元は一人の人間
それぞれの性格には勿論差があって、古き時代を駆け抜けた英霊らしく厳かな人物や、堅苦しい性格をした者、多くを語らず鬼の討伐に臨む者など様々だが、"彼女"はそのどれにも当て嵌まらない 明るく溌剌とした性格をしていた。


『鬼退治、かぁんりょぉ〜!』


淡く光る光となって、俺の周りをふわふわと浮遊しているミタマの姿に笑みが零れる。
清少納言殿は、とてもよく俺を助けてくれていた。
鬼との戦いに負傷は付きもの。それを逸早く治癒してくれる彼女の存在は、とてもありがたい。



「今日もありがとう、清少納言殿」
『ふふっ、当然よ! ナマエは私が手を貸すに値する殿方ですもの』


少女のような見た目に違わず、清少納言殿は比較的砕けた口調で俺に接して来てくれる。正直、他のミタマとの会話はやり難かったりするのだ。どんな話し方で接すれば良いのかが分からない。 なので、その点彼女の存在はとてもあり難かった。
戦闘後の会話でも、自然と話は弾むもの。


『あの鬼に焼かれたところはもう平気かしら?』
「ああ。ヒノマガトリにやられた箇所はすぐに貴女が治してくれたからな」
『役に立つでしょう?私。物書きだけが取り得じゃないんだから!』
「ははは。でも俺は貴女の書いた物語も好きですよ」
『本当!?』


桜花が先にお頭のもとへ報告に行く姿を見ながら、俺は外で息吹、初穂と共に報告の終わりを待つ。
そうしている間も、彼女のお喋りは続いていた。
ミタマとの会話が見えない息吹たちには、俺の姿はどう映っているのだろう。少し気になる。


『今まではずっと鬼に囚われていたから書くことが出来なかったけど、折角ナマエのお陰で自由になれたのだからそろそろ何か物語が書きたいわね!』
「へぇ。例えばどんなものを書くんで?」
『貴方の物語なんてどうかしら、ナマエ』
「…俺の?」


ええ。あなたのものがたり。

とは言われても、どんな話の内容になるのか俺にはさっぱり見通しが付かないのだが。


『"ムスヒの君"であるナマエを描くとあらば、筆が乗りそうね〜』
「そんな…主人公にされるようなタマじゃないよ、俺は」
『そんなことはないわ! ナマエは充分立派よ。私が保証するんだからっ』


英霊である彼女に言われると恐縮してしまう。
俺なんてのは、一人のモノノフにしか過ぎないと言うのに。
ミタマたちはえらく俺を過剰な存在として取り扱う。それには未だに慣れなかった。


「ナマエ? キミさっきからどうしたのよ?」
「いや、清少納言殿が俺を主人公にした物語を書きたいんだそうだ」
「えぇっ!それって、とっても凄いことじゃないの!」
「おいナマエ その清少納言殿ってのは美人さんか?」
「え…」
『えっ』


好奇心を発揮した息吹に問われて、ふと彼女の顔を振り返る。
急に頬を赤く染めた清少納言殿は無意味に両手を振って『み、見ないで!』と叫んだ。


「…どちらかと言うと、 可愛いと思う」
『ちょ、ちょっと…!』
「本当かよ! あぁ〜残念だなぁ。俺もこの目に拝んでみたかったぜ」
「息吹、アンタねぇ…」

「あいたっ」

「え? どしたのナマエ」
「なんだ?」
「いや…帳面で殴られた」




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