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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「俺の好きなタイプですか? そうですねー……綺麗な手、ですね」



――あれに見えるはナマエさんじゃないか?


バイト帰りに通るいつもの道が工事中だったから別のルートを通ったんだけど、まさかナマエさんが働いてると噂のホストクラブが道中にあるとは思わなかった。


タイミング良く外に出て来て接客中らしく、ホストは人の良さそうな笑顔で入り口付近にいる女性と話している。

そして今聞こえて来た会話の内容に、「……それって」誰のことを言ってるのか、俺にはハッキリ分かってしまった。



「手が綺麗な女性が好きなの?へぇ〜!ナマエ君って意外とそう言うことゆう人なんだぁ!」

「あはは〜 それってどう言う意味ですかー?」


ナマエさんの言った言葉の真意を掴めなかったらしい女性は、そこで「じゃあまた明日ねナマエく〜ん」しなりを付けながら車に乗り込む。

その車が曲がり角の向こうへと消えるまで手を振っていたホストが振り返った。


「夕士クーン 覗き見かぁ?」

「そんなんじゃないですって。たまたま!」

「まー何でもイイけどさ。 さっきのお客さん、なかなか美人だったろ?」


思ってもないこと言ってる…。俺が「そうでしたね」って言っても満足してくれないくせに。


「"手が綺麗な女性"なんじゃなくて、"綺麗な手"が好きだって意味っすよね?」

「そゆコト〜」


あー早く帰ってるり子さんのご飯食べてぇ〜


この後まだ数時間はアパートに帰ることの出来ないホストは、今すぐに帰ってご飯を食べられる俺のことを恨めしそうに見つめて来る。
「がんばってください」ぐらいしか掛けられる言葉がない。
こんな時、もう少し言葉を知っていれば、気の利いた一言が掛けられるんだろうか?


「……るり子さんに、ナマエさんが頑張ってましたよって伝えておきますね」


こんな簡単なことで良かったらしい


「マジで! よろしく頼んだぜ!!」


俺が口にした名前を聞いて、ホストは一気に晴れやかな笑顔になった。




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