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「#幼馴染」のBL小説を読む
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・2巻冒頭
・オリ妖怪有





半年間、アパートを出ていた俺が、また此処 『妖怪アパート』に戻って来たとき、秋音さんも詩人も画家も、妖怪の皆も喜んで出迎えてくれた。
それが本当に嬉しくて嬉しくて、階段にひっ躓きそうになってしまったほどだ。


部屋に荷物を運び入れる道中、そう対して重くなかった段ボールを担いでいると右脇にあった部屋のドアが思い切り開いた。「うおっ!?」中から出てきたのは気だるそうに頭を掻き毟っていたナマエさんだった。久しぶりに会ったと言うのに、この人はまたステテコ姿だ


「…朝から騒がしいと思ったら、夕士君だったのか」

「お、お久しぶりっすナマエさん」

「あーひさしぶりなー 何で此処にいんの? 戻って来たとか?」

「は、はい! また暫く、よろしくお願いします!」

「ふーーん………ま、程ほどにまた仲良くしてくれなー…」


ホストはそれだけ言うとバタンとドアを閉めて部屋に戻って行った。

テンションが低くて少しつれなかったのは、今が朝の9時だからだ。相変わらず昼夜逆転生活を送っているらしい。


よし、じゃあ荷物運びの再開を…。



『もし』

「うおぉっ!?」

『おや、申し訳ない』

「な、な、な…!?」


今方ナマエさんが閉めたドアから半身を透かした髪の長い男(男だろうか?)が声をかけてきた! え、誰だ!?



『こうして夕士殿とお話をするのは初めてですね』

「は、はあ… え…っと、」

『申し遅れました。わたくしは水切ともうします』

「みず…きり、さん?  あ、もしかしてナマエさんが前に言ってた…」

『はい。我が主ナマエの身の回りの世話を勤めさせてもらっております。 実は、夕士殿がまたこのアパートへとお戻りになることを知った我が主からお前も挨拶をするよう言い渡されましたので』

「あ、これはどうもご丁寧に」

『こちらこそ。…先ほど、我が主はあのような調子で惚けておりましたが、昨夜はとても喜んでいたんですよ』

「え、ほんとっすか!」

『はい。どうぞ今後も末永く、我が主と夕士殿の縁の紐が途切れませんことを祈っております』



ナマエさんの部屋の掃除や洗濯などをやってくれている小間使いみたいな妖怪がいる、と言うのは前に聞いたことがあった。何とも優しい妖怪がいるものだ、と感心した覚えがある。
水切さんは見た目も言葉遣いも物腰が丁寧で体が透けていることを抜きにすればとても馴染みやすい人…じゃなくて妖怪だ。

ナマエさんとはどう言う関係なんすか?と問えば、水切さんは笑った


『持ちつ持たれつな関係ですよ』

「…はあ と言うと」

『我が主が持って帰ってくださる"ほすとくらぶ"のお酒は、大変美味しゅう御座いますから』


…意外に酒豪らしい。


思えば、こうして妖怪の誰かと長話をするのも久しぶりだ。
つい気分が良くなる。迷惑かとも思ったけどもう少し世間話を振ってみよう



「この半年間でナマエさんの方に何か変化はあったんすか?」

『目ぼしい変化はありませんね。相変わらず ほすとくらぶで仕事をして、るり子殿の食事に舌鼓を打ち、泥のように眠る毎日です』



そこでちょっと気になることが出来た。 この妖怪は、ナマエさんと言う人間が、るり子さんと言う妖怪を好きであることをどう思っているのだろう



『ええ勿論、わたくしも我が主の恋路をとても応援しております』


あ、やっぱりこの人(妖怪)もなんだ


『主曰く、"運命である"ようなので 異種間の問題は微々たるものでしょう』



――長らくお引止めして申し訳ありませんでした。夕士殿もお忙しいようですし、これで。またお話が出来れば良いですね


最後に達観したような結論を言った妖怪は、そのままスゥっとドアの向こう側に消えて行った。…思うのだが、その入退室のやり方じゃないと駄目なんだろうか。





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