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疲れた。今日のバイトはとてもハードな内容だった。腕、足を筆頭になんだか背骨まで痛む。張り切ってたわけじゃないけど多分、知らず内に溜まってた疲労とかが体に出てたんだと思う。
もう、今日は早く寝よう。風呂に入る力はなかったけど腹は減っていたから、るり子さんに何か作って貰おう。
ちょっと遅い時間帯だけど、多分他の妖怪達(佐藤さんとか山田さんとか)は会社から戻って夕飯にするような時分だ。



フラフラと食堂へ向かう。もう瞼がピッタリ閉じてしまいそうになっていたけどどうにか開眼を維持しつつフラフラ、フラフラ歩く。と、そこであることに気付いた。


食堂が静かだ

明かりは点いている。でも、音がしない。



おかしいな…。夜遅いとは言え、妖怪たちが静まり返るようなことはないのに。

まさか、るり子さんが出払っているとか?
それは困る。もう空腹で爆発寸前なのに!



「…?」


こっそりと、静かに扉を開いた。首だけを突っ込んで中の様子を確認する。

さっき明かりは点いてると言ったけど、それでも中は少し薄暗かった。
いつもは騒がしい妖怪の姿も見当たらない。

目を凝らして奥を見つめてみた。入って確かめればいいんだけど、何と無くそうは出来ない雰囲気がこの場所から漂っていたんだ。



そこで気付く。奥のテーブルに一人、背中を向けて座っている人影があるのに


(…あれは…ナマエさん?)



多分、ナマエさんだ。確証はないけど、スーツっぽい服に縦縞が入っているのが薄っすら見えた。
テーブルに突っ伏して、どうしたんだ?


まさか気分が悪くなって倒れてるんじゃ!? と、心配になった俺が思わず中に入ろうとした正にその時、ナマエさんの声がした



「……るり子さん」



…ああ、疑問が確信に変わってくれて良かった。


しかし、いつものナマエさんらしくない。あんなに暗い声でるり子さんのことを呼んでいるのは見たことがないのに。
やっぱり何かあったんじゃ…と心配していると、ナマエさんのうつ伏せられた頭の上に、ぼんやりと浮かぶるり子さんの手が見えた。



撫でている。るり子さんの手が、ナマエさんの頭を。
おずおずと、ゆっくり、慈しむみたいに



「…今日……の……客の女……、面倒な……殴って……」



ボソボソと喋っているナマエさんの声はココまでは断片的にしか届かない。でも、愚痴っているようだ。それをるり子さんは聞いている。
相槌も頷きもないけれど、そよそよと撫でる手だけで、ナマエさんの話を"全身"で聞いているんだ。



「…るり子さん……俺……」



…盗み聞きは、良くないよな。

多分他の妖怪達も二人の為に空気を呼んで姿を消してるんだろう


…腹は、めちゃくちゃ減ったけど、まあいいや。部屋におつまみとかを備蓄してる画家の部屋に行って、お裾分けて貰おう。


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