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A


「あーーー……るり子さんイズマイン……」



基本的にこのホストは一日をこうやって潰していることが分かった。

日曜日の昼下がり。画家も詩人も各々の部屋に篭って思い思いのことに没頭している昼を少し過ぎたこの時間帯。
詩人から「一度ナマエクンの部屋を訪ねてみると良いヨ」きっと無駄な時間を過ごすことになるだろうけど〜 と言われて興味が出てしまった俺がバカだった。

最初は「おーいらっしゃい夕士君〜」と歓迎されたけど、それだけだ。そう、たったその一言だけ。
昼過ぎでも布団から出て来ないホストはずっと布団の中でああやって「るり子さん可愛い」だの「るり子さんイズマイラバー…予定…」だの「あああああやだ働きたくない!」と叫びとおしているばっかりだ。
正直言っていいだろうか。 なんて時間を無意味に過ごしてんだろ、俺


「…あのナマエさん じゃあ俺そろそろおいとま…」

「え、もう帰んのかよ夕士君」


もう少しゆっくりしてけよー

基本一切俺の方なんて見やしないのに俺が帰ろうとすると布団から顔を出して引き止めてくるのだから意味が分からない。家人に引き止められてしまえば無碍にすることも出来ず、「は、はぁ…」とまた床に座り直すしかない。もう少しゆっくりするどころか、ここに来てもう既に充分ですと言うぐらい"ゆっくり"しているんだが…



「…夕士君さー、学校楽しい?」


お。初めて向こうから声をかけられた! これには嬉々として答えてしまっても恥ずかしくないぞ


「まあ、フツーっすね。楽しいし、たまに嫌んなったりします」

「あー、まあ学校ってそんなモンだよね。うん分かるわー。俺がいた学校も大概だったけどな。…思い出したくもねぇけど」

「ナマエさんがいた高校はどんな所だったんすか?」

「あ、訊くんだそれ。俺いま思い出したくないって言ったんだけど……まあいいか。答えてやんよ。………男子校だ」

「…男子校、すか」

「そう、男子校、だ」


そう話すナマエさんの表情は何と言うか……遠い目をしている。


「いやぁ……モテたな」

「……男子校で、ですか」

「ああ、男子校で、だ」


その反動でホストやってるところもあるよ、俺

また布団に潜ってしまったナマエさんはくぐもった声でそう言った。ああなるほど、とちょっと納得してしまう。俺にはどちらもよく分からない世界だけど、そうなってしまう心情が少し悟れてしまったからだ


暫くうんうんと頷いていると、布団に隠れていたナマエさんが勢いよくガバッと飛び出して来た


「!? な、なんですか!」

「なんですか、じゃない!夕士君が俺の黒歴史を掘り起こすような事言わせるから!」

「い、言わせるから?」

「るり子さんに会いたくなったじゃねぇか!!!」

「………はあ」



(それっていつものことじゃ…)内心でツッコんだ俺のことなんて知らないナマエさんはそのまま「るーーりーーー子ーーーさーーーん!!!」と元気に部屋を飛び出して行った。一応、他人であるはずの俺を残して。って言うかワイシャツに下はステテコと言う最悪な格好のままで。
…ここの住人は、みんな常識と言うものが欠如してるんだなと思った。妖怪だけじゃなく、人間も


食堂のある方角から騒がしい声が聞こえて来る。一先ず、俺はどうしてたら良いんだ?
ナマエさんが帰って来るまでこの部屋の番をしてろ、とか言われてもごめん被る。るり子さんと会っているナマエさんがそんな短時間で戻って来てくれるわけない




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