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「#幼馴染」のBL小説を読む
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列挙される劣等


「ライナスさん、最近はあのアーキテクトのお話ばかりされてますよね」


女性職員のその言葉に、思わず「えっ」と声をこぼしそうになった。
"あの"と表されたアーキテクトが、"どの"アーキテクトのことであるかを脳が瞬時に理解してしまったためだ。

誰の事だとしらばっくれてみることも空しく、「…そうかな?」苦笑して見せると、「そうですよ」と返された。


「ライナスさんとあのアーキテクトは同期でしたよね?」
「そうだね、一応」
「やはり気になるものなのですか?」
「うん、まあ。ライバルだと、思ってるから」


嘘偽りではない。だが、"ライバル"だと思っているのは恐らく自分の方だけだろう。
彼は僕のことを なんだと思っているのか。
普段は気にも留めないそんな言葉が、その瞬間だけ、ひどく気になった。


「負けてられないなって思うんだけど、心のどこかにいる僕は、彼のことを頼ってるんだよ」


頼ってる、ですか。職員は意味が分からないと言いたげな顔をしている。職員は、僕と彼がやり取りしているメールの内容を知らない。




―――軽快な音楽が鳴って、パソコンの画面上にメールのアイコンマークが浮かび上がった。



『   勝利しました。』



普段はもう少し長文のメールを送って来る"彼"の、短いたった一言に泣きそうになった。
―そうか、彼は、勝ってくれた。オメガが盗難した、僕らの作ったAI機体に、打ち勝ってくれたのだ。


「………ライナスさん?」


ああすまない、いや、何でもないんだ。心配してもらうのはお門違い。ただ僕は喜びと、嬉しさと、悲しみと、そして一抹の悔しさに苛まれているだけなんだ。

盗難された機体とは言え、僕が、彼に勝つために研究と思考と繰り返して作り上げた機体は、またしても彼には敵わなかった。
よく分からない。彼という人間に出会ってからというもの、僕は、自分という人間が酷く脆い存在であったのだと教えられた。

嬉しいのに、悲しい。
有り難いのに、悔しい。
勝てない。勝てない。彼に、僕は 勝てないのか。


「……………―――僕は、」




君のことを なんだと 思っているのだろう




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