MAIN | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
天ルシ


あれから、俺が作ったシチューを三人で分け合って食べた。
と言っても、だルシは毎度のごとく「ニンゲンの食べ物など食せぬ」と言って姿を消してしまった。あの様子だと、今から寝るつもりなのかも知れない。
なので俺と天ルシの二人で頂くことになった。
天ルシは愛想が良くて「ほう、天界で天使たちに作らせていた料理よりも美味ですねマスター。なんと言う料理なのですか?」「シチューだよ」「"しちゅー"、ですか。なるほど」と俺に会話を振ってくれていた。だルシとはそんなことしたこと無かったから、新鮮に感じた。でもシチューを知らないってどうなんだ?やっぱり食べるものに違いってあるのか。


鍋の中のシチューをすっかり食べ終えて、近くの川原で使った皿の片づけをしていると、背後にいて頭上から手元を覗き込んでいた天ルシが「しかしマスター」と話かけて来る。


「何故マスターはあのような者を下僕として従事させ続けているのですか?」

どうやらまだだルシのことについて話したいことがあるらしい。

「しもべって…別にそんな風にあいつのこと思ったことねぇけど」
「ならば尚更不可解だ。それに…見たところマスターは、あの者以外のモンスターを従えてはいないご様子。たった一人の手持ちだからと情けでもかけておいでで?」
「そんなんじゃないって」


正直、天ルシやだルシの二人が話しているような"天界の事情"と言ったものに俺は興味がない。
伝説の宝が眠ると言うダンジョンを探して旅をする冒険者に過ぎず、共に戦ってくれるモンスター達の事情や境遇なんかは、俺にとって必要のない情報なのだ。

それに、天ルシはだルシのことを「あの者」とか下に見るような発言をしてくるが、あいつは強い。
出会いに恵まれず、仲間が増えない俺のパーティにおいて、ルシファーはたった一人でいくつものダンジョン攻略に手を貸してくれた。
刀身の赤いあいつの剣でたくさんのモンスターと戦い、俺を護って来てくれたことは揺るがない現実。


「お前たち天使を裏切った堕天使なのかも知れないけどさ、」
「俺にとってあいつは、最高の仲間なんだよ」

「………」

「分かってくれるよな、"ルシファー"」

「……まあ、よろしいでしょう。あの"私"が、これまでマスターの助けとなって来たことは認めなければなりませんね」


ようやく分かってくれたか、と一安心つこうとしたところに「ですが!」の声がぶつかってくる。


「これより先は、私もマスターの傍に従う身! もうあの者に頼らずとも、我が剣と力でマスターをお守りいたします!」
「お、おお…頼りにしてんぜ」
「お任せを!」
「でももうちっとルシファーとも仲良く…」


そこで物凄く嫌そうな顔をすんな!



prev / next