『諦めてくださいマスター』
「えぇえぇええぇえ………そこを何とか……」
『子どもが欲しいのならマスターのその溢れ出るフェロモンで人間の女を釣って来たら良いじゃないですかー』
「普通の人間には興味がないんだもの」
『だものとか止めてください。イイ歳した男が情けない』
昼食である生きたヒキガエルを口に放り込んで頬張っているエキドナの、
モグモグと動く口元を凝視しているナマエはエキドナを愛していた。
エキドナとキスが出来るなら毛嫌いしている蛙の体液がへばりついていようがその口に齧り付ける程だった。
だがエキドナは良しとしない。ナーガの頃、卵を割って出会ったこの主人の性癖を十二分に理解していようとも、出来ないモノは出来ないと諦めて欲しいのだ。
人間とでは子作りが出来ないことを
『マスターがアタシと同じ系列の存在なら出来るんですけどねー』
「分かった。ちょっと俺神格化してくる」
『冗談ですってば。どうするつもりなんですかもう』
崖の下へと駆け出そうとした主人の体を蛇の尾でひっ捕らえる。「ぐぇっ」と蛙が潰れたような声がしたが、先ほどエキドナが自身の腹に収めた蛙のモノではない。
主人の身動きを封じておいて、エキドナは改めて言った。
子作りは出来ないんですよと
『マスターのお気持ちは嬉しいんですよ』
「本当に? エキドナが大好きすぎる俺の気持ちちゃんと伝わってる?」
『ええこれでもかってくらい。 アタシとの子どもが欲しいなら、ダンジョンに行きましょうよ』
「え?」
『ナーガをドロップすれば解決じゃないですか』
――まあ、妥協策だな
逡巡の後、旅立ちの準備を始める単純な主人のことを エキドナはこれでもかと愛しているのだ
prev / next