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▼ 荒れるオーケストラ

・過去編










「…………はぁ…」
 参ったなぁ



「っせーな!いいから早くこの城を明け渡せよ!」
「いや、あのな……」





たまにいるんだ。
グランドラインの海で船を失い、海流に流されクライガナ島に漂着した海賊達が、島唯一の建造物の城を狙って、こうして殴り込みに来ることが。

今までも何度となく、そんな輩をナマエは1人で追い払って来たが、今回は過去に比べて襲撃してきた海賊達の数が違った。目測でも80,90人くらいは揃っているような気がする。大勢で難破して団体でこの島に辿り付けたなんて、余程の強運の持ち主なんだろうか。はぁやれやれ、とナマエは溜息を吐き、困ったように頭を掻いた



「この城を根城にしようたって無駄なんだぞ。勝手が悪いと思うがな」
「じゃあ何でお前はこの城にいんだぁ?」
「そりゃあ、オレがここの管理人だからで…」
「なら、テメェはおれ達の捕虜にしてやるよ」

「……何故そうなるんだ」



コイツ等、なにもミホークが留守の時を狙って来なくてもいいじゃないか

暫く前から同居人となったミホークの姿を思い浮かべる。
肝心の時にいないウチの戦闘要員は、5日ほど前にまたフラリと海に出て行ってしまったのだ。大体一週間単位で帰って来るミホークの、今すぐの帰還は望めそうにない。



追い返そうにも武力の数が違うのでは強く出れないし、今はこの海賊達に付き従うフリをして、ミホークの帰りを待つか

いやだが、素直に媚び諂うのもそれはそれで男としてのプライドと言うか、こんな若者達に強い顔されるのが厭だというか



「…すまないが、引き取って貰えないか?」
「アァ?」

「この城はもう既に1人、海賊が根城にしているんだ。縄張り争いなら他所の土地でしてもらえな、」
「1人だァ!?ふざけたコト抜かしてんじゃねぇよ!」



船長各のような大柄の男が1人、クルー達の身を押しのけて前に乗り出してきた。
巨大な戦斧を手にしていて、脅しつけるように首筋に宛がわれる
大の男だが、冷や汗掻くぐらいは勘弁してほしい



「おれたちゃ100人いるんだぜ!?何処の誰だか知んねぇがよ、そのたった1人なんかがおれ達の相手になると思ってんのか?いい加減に…!」









「ナマエ」





「………お帰りミホーク」
「ただいま」




シッケアール城の巨大扉を開け放った闖入者は、まだ帰らないと思っていた人物その人であった


突然のジュラキュール・ミホークの登場に、襲撃してきた海賊達は絵に描いたように慌て出した。なぜここに鷹の目が!おれ噂聞いたことある!グランドラインのどこかの城を鷹の目が拠点にしたとか!なにっじゃあまさか!

依然としてナマエの首元に斧を突きつけたままの船長も、ミホークの姿を見るや否や 今度はそちらが冷や汗を掻き始める番だった




「ミホーク、今回は、えらく早いお戻りで…」
「ナマエ、それは助けた方がいいか」




ナマエの言葉を無視したミホークの指し示すソレとは、ナマエの首にある斧のことだった



 是非ともそうして頂きたい。早く追っ払ってくれ



黙ったまま頷いて目でミホークにそう伝えると、ミホークは手荷物を床に落とし、背中に背負っていた黒刀をゆらりと抜き放った



「これが終われば、風呂に入る」
「あ、ああ すぐに沸かす」
「ん」




「や、や、やっちまえぇ!」と、
気丈に士気を奮い立たせ、果敢にも突撃を仕掛けた海賊達だったが、ミホークにとっては準備運動にもならなかったらしい





ナマエの沸かした風呂にサッさと入って行ったミホークを見届けてから、
新しく舞い込んだ大勢の海賊達を一網打尽にしグランドラインの海へと投げ捨てると言う大層骨の折れる仕事を終わらせる

ミホークへの礼も兼ねて、今夜の夕食は盛大にしてやろう
城へ戻る道中、献立を頭の中に描きながら


今日もシッケアール城の周りの海は、よく荒れている




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▼familyBOSS@シッケアール城にいた主が賊に襲われそうになっているところにミホークが現れる/ライさん
リクエストありがとうございました!


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