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▼ ハッピーエンドは回避不可能だ

こっちの世界でも、月は同じように黄金色で、ちゃんと夜空で輝いているのだから自分のいた世界との違いなんて、やはり無いのだと思う。人々の生き方とか、微々たる環境の違いとか、その他諸々の要素を寄せ集めたって、ナマエのこの世界での生活を生き難くする理由には繋がらない。それは今、自分がトラファルガー・ローと言う巨大なシェルターに守られているからだ…とも思うが、それはなるべく考えないようにしている。ナマエのこの考えはきっと、ローに聞かせれば辛い顔をさせてしまう事になるからだ。例え本当にそうだったとしても、ローが悲しむぐらいなら、自分はそれに甘えさせて貰うだけだ。大人のプライドとか、そんなものは今の自分には必要がない。あの子が大好きだと言う自分がいれば、それで良い気がするのだ




「……案外甘えたがりだったんだな…」

「誰が?」
「!」




ナマエの背後に立っていたローの顔は不機嫌だ。なあ、誰が甘えたがりだったんだよ。と追求する声は面白くなさそうで。

突然の登場に唖然としていたナマエがじわじわと緩く笑顔になって行く。それに釣られてローも顔を赤らめた。「な、んだよ?笑って…」と言いながら、船縁に立っていたナマエの肩に頭を乗せてぐずってくる。



「オレが、だよ」
「…ナマエが?…甘えんぼなんて思ったことはないけど…」
「そうだな。ローの方が余程、」
「よほど、なんだ?」
「甘えん坊だと思うな」
「…言いやがったな、バカ」



軽く脇腹を小突かれる。ローが恥ずかしいのを誤魔化す為によく取る行動なのは重々承知だ。叩いてきたローの右手を掴んで、自分の左手で握り締めた。

「…っ」ナマエとあまり手を繋いだことが無い。その珍しい行動にローは?、?と困惑する。
手を重ねてきたナマエはニコニコと笑っているし、何のつもりだよ放せ、なんて心にも思っていないローはどうすれば良いのか分からなくなった。カーっと耳まで赤らめて、俯くしかない。



「…オレはな」
「なんだ?」
「こんなに幸せで良いのかと思ってしまう」
「…どう言う…?」

「ワケの分からない事象のせいで妙な世界に飛ばされて、でもすぐにローと出会えて、そんなローにこれでもかと愛されて、オレを愛してくれるローをその傍で見ることが出来て、とても幸せなんだ」



――「オレの幸せは、ローの傍でずっとローを見ていることだ」



あの日、明け方近くの同じく月夜の晩にナマエ言った言葉だ

「…向こうじゃ仕事と部下の教育に追われて、恋人を省みる余裕も出来なくてな」

何度「別れてくれ」って言われたことか。
ははは、と笑うナマエに反してローは顔を難しくさせる。別にナマエの過去の恋愛事情を聞いて苛立っているのではなく、やはりナマエを見る目のない過去の女達に嫌悪感を抱いているのかもしれない




「なのにこの世界で、ローに好かれる自分を見て、あぁ良かったと思ったよ」
「………」
「オレはオレのままでも、人に好かれるんだってな」



寂しげな横顔にクラリと来たわけではないけれど、ナマエの為なら言葉を惜しまず伝えるのも吝かではないから



「……おれがナマエを愛する」
「…そうか」
「誰にも譲るつもりはない。
おれは執念深い上に性質の悪い方向に性格が捻じ曲がってるから、ナマエが嫌になったって放さない」


そのつもりで…、と言いかけたローの頭に柔らかい重み


「――なら、そうまでしてくれるローをオレは、一生大切にさせて貰わないといけないな」
「……っ!」





アンタは、また、恥ずかしいことを!

もう流石に耐え切れない。余すところなく赤くなった顔をナマエの胸に押し付けた。



そしてゆっくりと、ローがコクンと頷いたのを見て、
ナマエもほんの少し照れ気味に、ローの頭を掻き抱いた
















「………消灯時間です、とはとても言い出せない雰囲気ですなバンダナ…」
「おれら、立ち去るべきだったんじゃねぇんですのペンギン…」
「…ところでシャチは何でそんなにしょぼくれてるんだ」
「ほっといてくれ…改めてキャプテンの巨大さを痛感したとこだ…」




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▼恋情増幅@クルーも引くような甘い話/茶々尾さん
リクエストありがとうございました!


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