8万企画小説 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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▼ ああ、まさかこれが恋だなんて


海軍准将であるナマエの会議中の立ち位置と言えば、他の見張りたちと共に壁際に並んでいることが多かった。

だがしかし今、ナマエはジュラキュール・ミホークの座っている席の真横に立っている。

身長が3mを越すナマエでさえ、七武海の面々の中では子どものような背丈しかないが、
腰掛けているジュラキュール・ミホークの隣に立つとなれば目立ち方は変わってくるもので、
後ろ手に組んだナマエの手は緊張で手汗に滲んでいる。

この場に不釣合いな自身の階級と、七武海たちの只ならぬ威圧感の影響が凄まじくナマエを襲っていた

召集がいつ、どうやって終わったかもよく覚えていない
気がついた時には、ナマエの隣にいたジュラキュール・ミホークが「…ナマエ」と名前を呼びながら、ナマエの腹部あたりを押していた









「あれ、何でですかね」
「…おれは鷹の目じゃないから分からんぞ」



困り果てていたナマエは、自分の上司に相談を仰ぐ
数ヶ月前、召集に参列したジュラキュール・ミホークと邂逅して以来、なぜか執拗に気に入られてしまっていた
噂で聞いていた鷹の目の姿とまったく一致しない行動に、ナマエは疑問を抱く
"何を考えているのか分からない"――そんな鷹の目に好意的な態度を取られている理由が、解らないのだ



「いつの間にか名前まで覚えられていましたし…」
「お前、本当に鷹の目に何かした覚えはないのか?」
「ありませんよ!初めて顔を合わせた時だって、擦れ違ったぐらいなもんでしたし」

「ふぅん……じゃあ何か…ナマエの顔が、鷹の目の性を刺激する作りをしていたからとか…」
「何ですかソレ……」



上司が真面目な顔をして提案したことも、一概にノーとは言えなかった

ジュラキュール・ミホークは、じっと、それこそ鷹のような目つきでナマエの顔を見つめてくる事が多かった
会議中にでさえ、隣に立って高い位置にあるナマエの顔を仰ぎ見るかのような行動を多々取る場面がある。
その度にナマエは冷や汗が止まらないのだが、あの鷹の目の行動は一体何を伝えたがっているんだろう、甚だ疑問だ




「失礼しますナマエ准将!」
「なんだ?」

扉を開けて入室してきた海兵が敬礼を取る

「鷹の目がナマエ准将をお呼びです!」
「…………あの方はお帰りになられる頃じゃ…」
「はい、船着場にてお待ちです」
「…またか」
「ほうらお呼びだ、行った行った。 然もあらばあれ!ナマエよ!」
「他人事だと思って!」



召集され、会議が終わればすぐに退出するジュラキュール・ミホークが、
伝令してきた海兵の言葉どおり、帰りの船着場でナマエを待っていた
今日、こうして鷹の目と顔を合わせるのは実に20回目
会議を真面目に聞いていたのかさえ定かではない回数だ



「…何事でしょう鷹の目」
「帰るから、見送りをしてもらいたかった」
「はあ……そうでしたか」

鷹の目は、何もナマエの邪魔をする行動は決して取らない辺りがまだ好ましく思えている
じっと見つめてくるのだって直接的な害はないし、
会議の最中隣に立たせようとするのだって壁際の警護から数m前に出ただけで支障はないし
たまにこうして要求を課せられることもあるが、無理難題な内容ではない

「本日もご苦労様でした」
「……いや、楽しかった」
「……然様で」

鷹の目が言う"楽しかった"とは、"ナマエの顔を見ていた時の時間"だけを指す言葉だ。以前聞いた

「また不定期にご足労頂くことになりますが…」
「その時は、ナマエがおれを迎えに来い」
「え」

おっとこれは無理難題っぽいぞ…?とナマエは顔を歪めた。大方その役目は将校以下の海兵達の役目なのだが、それをナマエが受け持つようにするには上に掛け合わなければいけない

「…嫌か」
「い、いえいえ、向かわせていただきます」
「そうか」

しかしそんな顔をされてしまっては、ナマエに何故か"罪悪感"が生まれてしまうわけで
普段は帽子の陰となっている鋭いジュラキュール・ミホークの目が、
ナマエに何かを要求する時ばかり顔を出してくるのがいけないのだ。ナマエは心の中で深く嘆息した



「……」
「あの…まだ何か?」
「…顔に触れても構わないだろうか」
「…ど、どうぞ」



要求の意図が掴めなかったが、ジュラキュール・ミホークが手を伸ばしてきたので
彼が触れやすいようにナマエも膝を曲げ、腰を屈める

繊細に手入れされているようで、どこか硬く節くれだっている鷹の目の手が、ゆっくりとナマエの頬を滑った


「………鷹の目?」
「………」
「…!?」


頬に触れたまま何も言わない鷹の目を訝しんだナマエが声を掛けると、
鷹の目の顔が見る見る内に赤く染まっていくではないか。
驚きの声を上げたナマエと、自身の変調に気付いたのか、表情を隠すように慌てて帽子を深く被りなおしてジュラキュール・ミホークはナマエの顔からバッと手を放した

「…へ、変なことを頼んだ。すまない」
「あ、いえ…」
「見送りご苦労 …では、また」
「はい」


ナマエに背中と黒刀を見せたジュラキュール・ミホークは、出航準備の整った海軍船に飛び移った。そして直ぐに奥に引っ込んでいったようで、ナマエからは姿が見えなくなった。船の船尾が水平線の向こう側に消え行くまで、じっと敬礼をし続ける。礼儀は通さなくてはいけないのだ。不可解なことをされた後だったとしても






用意された船室に入ったミホークは、
先ほどまでのナマエの頬の感触を思い出してまた顔を赤くする
――…一目惚れとは実に、難儀なことになったものだ


ミホークは心の中で、深く、深く、深く嘆息した






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odai::家出
▼海軍男主に一目ぼれして乙女化疑惑なミホークorドフラミンゴ/o-sami-oさん
リクエストありがとうございました!




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