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▼ とっても信頼していた

・暗いです
・病んでます
・全くハッピーではないエンドです
















"アイツ"の家は貧乏だった
両親兄弟みんな強盗に殺されて、たまたま外に出ていた"アイツ"だけが無事に生き残った
大して裕福な家じゃなかった"アイツ"の家がなぜ強盗に襲われなくちゃいけなかったのか
ただその強盗に家を見る目がなかったのか、怨恨があったのか、それは分からない
強盗は捕まっていないのだから、訊ねられる相手がいない
そんなことよりも"アイツ"の心配をおれはする。無事に生き延びたからと言ってこの先も生きていけるわけじゃない
ガキである"アイツ"が職を探すこと事態が大変で、毎日食べる量は日に日に少なくなっていく一方だ
幼馴染として、"アイツ"を死なせるわけにはいかないと思った
おれは"アイツ"が嫌いじゃなかったし、"アイツ"に自分の食べる握り飯をわけてやっても全然かまわないって思えるぐらいには好きだ
だから遠慮なんてすることないし、"アイツ"が頑張って一日を生きていることは分かってるつもり




「○○○―!喜べ今日の分の取り分だー!」
「×××、また海賊からせしめて来たのか?あんまり危ないことは…」
「大丈夫だって、死にゃしねぇよ」
「そうか…?×××、気をつけろよ?」




"アイツ"の言葉に大丈夫だって!と笑って袋の中から奪ってきた金品を取り出した
小粒程度の宝石がせいぜい、と言ったところだったけど、これを換金して金に変えれば"アイツ"の二日分の食費くらいなら確保できる。おれの分の取り分はきっちり分けてるから、こっち側は全部"アイツ"にやるんだ!遠慮?すんなって言ってるだろ!またこれくらい直ぐに取ってきてやるから!有限実行がモットーだ。またその日の夜に、出くわした海賊たちから金品を巻き上げた。ちゃっちいカトラスしか持ってなくて、素手の子どもにさえ勝てやしないんだから、海賊なんてどうせ雑魚ばっかりなんだ。悪ばっかりだし。海賊は悪い奴だから、そいつ等から金目のモノを盗ったってバチなんて当たるわけねぇよ。



なあ?




「×××、最近こんなのが出回ってるんだけど…」
「あっこれ手配書じゃん。おれか!」
「どうしたんだこの額…ただのコソドロにしては付きすぎだ。無茶してるんだろ?」
「してねーよ。この前入った船がそこそこの海賊だったんだろ、だからだ」
「………」
「そんな難しい顔するなって。今日はお前に土産も持ってきた」
「え?金を分けてくれてるだけでも有り難いのに、土産なんて要らない…」
「そう言うなって、ほら見ろ。綺麗なナイフだろ!」
「ほんとだ…刃こぼれ1つない」
「強盗なんかが入ってきたらコレ持って脅してやれ」




この日をきっかけに、おれは手配書付きとなったわけだが。"アイツ"は心配していたが、別に嫌だと思ったことはない
この手配書を頼りに、賞金稼ぎたちが狙ってくるから、逆にそいつ等から物品を盗める機会が増えたんだ。いいことだ
その後もおれの懸賞額は、どんどん上がって行った。おれが強奪行為を始めてからおそらく5,6年は経ったと思うが結構なスピードで上がっていったんじゃないかと思う。
この前なんて懸賞金6000万の男を"たまたま"殺したせいで一気に1億に上がった
そのことを"アイツ"に伝えたら、"アイツ"は難しい顔をしていたな




「……×××、懸賞額が、いちおくに…」
「そうなんだよ。上がったよなぁ、おれも」
「………」
「でも最近シケててごめんな、○○○」
「え、何…?」
「いやだから、最近あんまり金分けてやれてないだろ?だからごめんな、って」
「あぁ…てっきり×××が溜め込んでるのかと思ってた…」
「そんなことしねぇよ! ○○○、お前また最近痩せたんじゃないか?腕とかガリガリじゃないか」
「そう言う×××は、腕ががっしりしてるな」
「そりゃあ、海賊と渡り合わないといけないからな。肉つけねぇと」
「そう……………………、………………」
「……?○○○…?」




どうしたんだよ、そんな難しい顔しちゃってさ。腹でも痛いのか?
ううん、そんなことないよ。 ねえそうだ×××
なんだ?
今日さ、料理ご馳走するよ
えっお前が?いいよそんな無理しなくて
大丈夫だから、たまには作らせてくれ。お礼ってことで
…そんな蓄えあるのか?気にしなくてもいいんだぞ?
大丈夫って言ってるだろ!!!
! わ、わかったよ、そんな怒鳴るなって









それであの日、"アイツ"はおれに料理を作ってくれたんだ。いやあ驚いたよ。目が飛び出るかと思った。"アイツ"結構料理が上手いんだって、あの時初めて気が付いたんだ
カボチャのスープは甘くて温かかったし、小鳥のステーキは量は少なかったけど味付けがおれ好みで量があればいっくらでも食べられたし、"アイツ"がよそってくれた白ご飯も美味しくて、煎じてくれたお茶だって何杯でも飲められたんだ
あの時の食事、今までの"アイツ"としてきた食事のなかで一番楽しかったと思う
楽しすぎて、おれは寝ちまったんだよ






今なら分かることなんだが、おれが甘い美味いと言って何杯もおかわりしたカボチャのスープ、睡眠薬が入ってたんだよな。さぞグッスリ眠らされたことだろうさ。だって"アイツ"が、重いおれの体を引き摺って海軍基地に連れて行ったときも、おれはちっとも目覚めなかったんだから。目覚めた時のおれはそりゃあもうビックリしたさ。だって"アイツ"の家じゃなくて海軍基地の牢屋にいたんだからさ。慌てて海兵に問いただしたさ。おれはなんでここにいるんだ!って。そしたらアイツ等、笑ってこんなこと言うんだぜ。お前の友達とやらが連れてきたのさ、って。な?ありえないだろ?"アイツ"とおれは親友同士だぜ?何年も何年も、"アイツ"が貧乏を理由に死んでしまわないようにって何年も金を分けてやってたおれをさ、"アイツ"が海軍なんかに売るわけないだろ?嘘吐くならもう少しリアリティーのあるの吐けよな!って笑ってやったよ!笑うしかないだろ!海兵は哀れなモンでも見るようにおれを見るんだ。睨み返してやったけど、あんま効力はなかったと思う。その時、おれはずっと"アイツ"を信じてたんだ。"アイツ"がこんなことするはずない、するはずない、するはずない、するはずないするはずないするはずないするはずないないないないないないって!でもアイツはやったんだよ!!友達売りやがった!一億欲しさに!友を!売ったんだ!!あーー憎んだよ憎んだ、憎んだとも!インペルダウンに移されることになったおれの顔を見ようと"アイツ"が一度だけおれのところに来たんだ!久しぶりに見た"アイツ"の姿は様変わりしてたよ!手も足もガリッガリだったくせに、若干小太りになってやがんだ!着てた服も悪趣味全開の色してさ、隣に女侍らせてやがんの!ぜんぶ!おれを!売った金で得たモンばっかりのくせに!ずっと"アイツ"を信じてたおれに事細かに真実を教えてくれたさ!一億が欲しかったんだとよ!おれの送ってくれるはした金なんかじゃ、ちっとも物足りないって思ってたんだってよ!笑い話だろ!なあ!おれは一体何年お前を想い続けてたと思ってる!インペルダウンに入れられたとき、おれは昔のことを思い出したよ。海賊のモノ盗りやってたときに出会ったキッドって言うおれと同い年の海賊に、一緒に海賊やらねぇかって誘われたことをな。"アイツ"を置いてそんなことできるか!って言ったおれに、キッドはえっらく渋い顔してたっけ。「他人の為に生きるなんざ、つまんねぇだろ」とか何分かったような口してって思ったけど、後悔ってホント後からやってくるんだな。キッドについて行ってりゃあ良かった。あんな男の面倒見て、最後に裏切られて、そんで死んでいくんだ。おれの人生なんだったんだろーな







そして今まさにナマエの頭上の上にはでっかいギロチンが取り付けられている。
大勢の観衆の視線を浴びながらの死……なんて豪勢なものではなく、海軍本部基地の地下処刑場でひっそりと人生の幕を下ろすことになった
















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▼ネタ@とっても信頼していた/和胡さん
リクエストありがとうございました!














・文中の○○○→主の幼馴染の男
・文中の×××→男主のこと
・文中の"アイツ"→主の幼馴染の男
・世界観を借りたオリジナル
・断頭台の上に立たされた主の回想
・幼馴染の男はただのモブ



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