8万企画小説 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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▼ 二度と会いたくはない

「いやー!助けてくれてありがとなー!」
「お前はオレを知らんだろうが、オレはお前をよく知ってるぞ"麦わら"のルフィ」
「ん?もしかしてココ、海軍船か?しまったー!」
「何で最初に見つけた海賊がお前なんだ麦わらのルフィ」
「おもしれー海獣追っかけてくんじゃなかったぁー!」
「殺しては駄目だ、殺しては…」
「ナミ達ここ分かんのかなー…」





(何だろうアレ、会話がまったく成り立ってない)

いやそれよりも驚くべきなのは、あのナマエが目の前の海賊を殺そうと動いていない
武器である両手は組まれたままで、戦いの意思が全く感じられなかった
突然現れた海賊が麦わらだったことで安心出来ずにいる海兵達は、上官のらしくもない行動のせいでそちらにばかり意識が行っている




「………例外がある」

「え?な、なんですかナマエ殿」

「オレが殺してはいけないと教えられた海賊の例外だ。
1つは七武海、1つは四皇、そしてもう1つが、――ガープさんの親類だ」



重々しい口調でそう告げたナマエの顔は、やはり苦々しいソレだった
目の前にいる阿保面晒している海賊を殺すなよ、と弟子時代に師から教えられた

「ワシには孫がおるんじゃがなナマエ」
「…ガープ殿に孫が…」
「ルフィと言うんじゃが、海で会っても手を出さんといてくれんか」
「………何故ですかね」
「だってワシの孫じゃ!!」
「…はあ、分かりました」
「それ以外の海賊ならば良し!」
「はあ」

ナマエにだって人の心はある。お世話になった恩師に頼まれたことならどんな事でも守るつもりだ。たとえ、殺したくてたまらない衝動がウズウズと疼いていても



「なんだ!お前じいちゃんの知り合いか!」
「……弟子だ。あと気安くお前って言うな麦わらのルフィ」
「じゃあこのまま見逃してくれるのか?」
「縄は解いてやる。そのまま何事もなかったかのようにこの船から消えろ」
「ほんとか!お前いー奴だな!」
「……………」



ガープ中将 アンタのお孫さん、聞かされてた話の通りのマヌケですね

どうせ今頃海軍本部の自室で呑気に煎餅と茶を食しているであろう師に思念を送った
ハラハラと事態の成り行きを見守っていた海兵達の1人に、「おい麦わらのルフィの縄を解いてやれ」と声をかける。よろしいのですか!?と慌てた海兵に、よろしいんだ!!と押さえを掛けているような切羽詰った声で返した。ナマエの機嫌を損ねてしまわないように、命じられた海兵はすぐに麦わらのルフィの縄を解いてやる



「お、ありがとな!」
「…いいからこのままさっさと行け。二度と会わんぞお前とは」
「じーちゃんのこと、好きなんだな!おまえ!」
「…! いいから、とっとと消えろ!」
「んー、そうしてぇのは山々なんだけどよ、仲間の船が見当たんねーんだ。知らねーか?」
「…たとえ知っていたとしても、そいつらは殺す。ガープ中将に教えられてるのはお前のことだけだ。仲間のことは知らん」
「あ!ダメだぞお前!おれの仲間に手ぇ出したらぶっ飛ばす!」
「…………ほー?」



やめてくれ麦わらのルフィー!せっかく眠らせてるナマエさんの鬼を目覚めさせてくれるなー!
怒りが飛び火するのでは、と恐怖する海兵達ばかりだった。
バチバチ、ゆらゆらと睨みあうナマエと麦わらのルフィ
組んでいた両手をナマエが外そうとした時、「ルフィーー!!!」と言う大きな声が間を割って入って来た



「ルーフィーイー!!」
「おっみんなー!」
「なんっでテメェは海軍の船の上で呑気にしてんだ!!」
「やー!だってコイツさー!見逃してやるってよー!」
「はー!?」



オレンジの目立つ船体 麦わらの一味の海賊船だ
まだ遠巻きにしか見えていないが、拡声器を使って此方に声をかけている長鼻の男の姿が見える

ナマエはニヤァと口を歪めた
アレは、攻撃してもいいだろう



「砲撃班!砲台用意!」
「はっ!」



「あっ!テメェやめろって!」
「煩いぞ麦わらのルフィ 何でオレがお前の言葉を聞かねばならんのだ」
「……よぉし、んじゃこうする」
「は?」



向かって来ている自分の船に向けて、長く腕を伸ばした麦わらのルフィはニカッと笑い、
すぐに海軍船から姿を消した。しまった!とその姿を追えば、飛んで行ったその姿はもうすでに向こうの船の船首に見えている。



「おーい!おれこっちにいっからさー!攻撃しないでくれよー!めんどくせーからさー!」



「…!! おい!麦わらのルフィと言うのは聞いていたよりも頭がキレるのか!?」
「ど、どうなんでしょうか!!」



見事な悪知恵働かされた!攻撃してはならないと言われている麦わらのルフィがあの船に乗ってしまえば、迂闊に砲撃できなくなったではないか!

ナマエは出し抜かれたことへの苛立ちを隠しもしないが、
それでも恩師のことを思い怒りに震える拳をゆっくりと下に下ろした




「―――いいから消えろ!!もう二度と会いたくない!」
「そーだなー!じゃあなー!」



そう言うと麦わらのルフィは一味に号令を掛け、それにフランキーが応える
船の船尾から出された空撃砲の力で、船体は浮かび上がり、ナマエの海軍船を軽々と飛び越えて海の彼方に消えていった。
あれで確か、ガープ中将も麦わらを取り逃がしたんだったか




「………やはりガープさんの親類だ、アレは」
「……そうですね…」
「………」
「これから、いかが致しましょうかナマエ殿」
「…………もういい」
「え?」

「…どっと疲れたから、もう今日は帰還するぞ」

「は、はい!!」




なんて ことだ あの、ナマエさんが!












本来ナマエ達が行うはずだった海獣と海賊討伐の任務は、
あの場に偶然居合わせていた麦わらの一味の手によって片付けられたのだと、後になって知らされた







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▼海軍一残酷な男主が海に落ちたルフィ助ける 友情/藍猫さん
リクエストありがとうございました!


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