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▼ 底で君を待っていよう

海は青い。もしも海が赤色をしていたら、黒色をしていれば、海はこんなにも人間達を惹きつけなかったのではないか。それは限りなく個人的な意思に基づいて出した結論だが、多分に間違っているとは思わない。ずっとこの海で人間達を見てきた。人間が宝物を隠し、人間がその宝を追い、人間が跋扈するこの青い海が、大好きだ。










『大きい人間だねぇお前は』
「そう言うお前は、えらく薄ぼんやりしてるなぁ?」
『人間の目に映るように実体を保つのはね、大変なんだ』




あれ幽霊じゃね?

とサッチがおっかなびっくりと隣にいたマルコに同意を求める。


いや精霊らしい

マルコの返答にサッチはえええええと大きな声を上げた。


精霊と言うのは思ってたよりも人間らしい姿をしていた。ちゃんと足もある。羽はない。ふわふわと空中を浮遊できているのはどんな原理なのか。少年とも青年とも言いがたい容姿は、精霊の隣に座っている白ひげの半分の身長もない。しかし白ひげの威圧感を物ともしないその言動と神経は図太いようだ



『――"白ひげ" へぇ、名は体を表すとは人間は上手く言ったものだ』
「本物の名ではないぞぉ」



え、そうなのか?
そう戸惑った精霊に、「オヤジにはな、"エドワード・ニューゲート"って言うカッコイイ名前があんだよ!」とサッチが親切振りかざして教えてやれば、精霊は素直に顔を明るくさせた



『 綺麗な名前だ』
「…グラララ そうか、綺麗、か」
『嫌な海賊達だったら船沈めちゃおうかと思ってたんだけど、君たちならイイかな』


「!?」



急に精霊の口から飛び出した不穏な台詞に若い衆は体をビクつかせた。
海に棲む精霊と言うのはどこの文献にも"簡単に船を沈める程の力を持つ"と書かれているもんだ。幼い頃より本を読み慣れ親しんだその話は本当なのか、と



『沈めないと言ってるのに、なぜ彼らは怯える?』
「アイツ等は若ェからなァ それで?"海の精霊様"とやらが、おれ達に何の用だ」
『用?ないよ 大きい船がオレの頭上を通過しようとしていたから、見てみたくなっただけ』
「ならもう目的は達しただろう。これ以上息子たちを怯えさせるのも可哀想だ、帰ってくれねぇか」
『ああ そのようだね』



ふわりと浮かび上がった精霊は、そのまま船首の方へと飛んで行く
遠巻きに見ていたクルー達は触れないようにと横へズレて道をあけていった。
人間が精霊に触れられるはずもないと言うのに、と精霊は思った



クジラの船首。巨大な船体。波に削られた箇所は、丁寧に修復された跡がある
この船は、この海賊たちを愛している。愛されているようだ





『もしこの船が海に沈んだときは、一度だけ引き上げてあげる』

「なんだぁ?精霊のご加護か?」

『お節介、って人間は言うと思うけど』



あとエドワード・ニューゲート
君の笑い方は独特だね。今度その笑い方真似てみようかなぁ



『それじゃあ、エドワード・ニューゲート ――がんばれ』

「グラララ…今まで貰ってきた応援の中で、一番簡素な言葉だ」





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▼ネタ@人外主(精霊) 設定/リナさん
リクエストありがとうございました!




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