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▼ 頼りない脇役ですか?

*ドフラミンゴ時代捏造








「医者なんて要るか!傷口に酒吹っかけとけば大体治るだろ」
「…そ、れは、おれに対する当て付けとかそう言う…」
「アレ!」
「……そうか……」



宣言どおりに、クルーが用意した酒をザックリ裂けた腕にドボドボと掛けている光景に、ローは眉を顰め口をへの字に曲げた。見ているだけで痛い。肉にかかる酒がビリビリと痛んでいるはずなのに、ナマエは顔色1つ変えず乱暴に手当てをした傷口にヨレヨレの包帯を巻いている。思わずローがそれに手を伸ばした



「1人じゃ巻きにくい、だろ。おれが巻くから、ナマエはじっとしておけ」
「じゃあ頼む。ちゃちゃっと巻いて」
「わかった」



せっせと手早く、でもキチンと包帯を腕に巻くローは、ナマエの横顔を盗み見る

ドフラミンゴ傘下の海賊の1人で、豪傑な男たちに混じって海賊団の船長を任されている女傑のナマエが負傷して帰還してきたとの報を受けて慌てて飛んで来た。ザックリ開いた傷口を見てローが呻いたが、ナマエは気にしてすらいない。その事実にもまた、ローは眩暈がするようだ


短く肩口で切りそろえられたナマエの髪は砂埃を被り汚れているし、目を凝らして見てみれば頬には無数の薄い切り傷がたくさん出来ていた。彼女を強気に思わせる黒い眉毛は顰められっぱなしで、カサカサに乾燥している唇はそこかしこが切れていた

ナマエは自分のことに関して酷く無頓着であった
それが、ローは心配する。



「……今回の指令は、どんなだったんだ…?」
「指令に関係してないお前に、教えるわけないでしょ」



割り振りではいつも外される。ナマエと共に航海したことはない
だからナマエが海上でどんな無茶をして戦っているのかは知らない
ローよりも年上である彼女は、ローには何も教えてくれないでいる。教えてくれと懇願する気はないが、少しくらい頼られたくて堪らない。男として



「そんなことより、ロー」
「ん…?」
「お前、また刺青入れたんだって?」
「そ…、れは…」
「私の傷の心配するくせに、自分の体に傷を付けて、矛盾してるな?」



ハ、と笑ったナマエは、包帯で巻かれた腕を隠すように長袖のコートをに腕を通した。そして手に提げた大剣を背中に担ぎなおす。
ナマエに強かに責められていることも忘れ、ローは彼女の様子に慌てて手を伸ばした



「ま、待て!何処へ行くんだ?」
「……風呂にも行っちゃいけないかい?」
「あ…あぁ、それなら…」



また、次の指令をこなしに行くのかと思った、

弱々しく落ち込んだローの表情に刻まれているメッセージに、ナマエは気付いてまた1つ溜息を吐いた

若いのに、ドフラミンゴの下についていて、可哀想な男だ。
憐憫ではない、同情だ




「……ローも、えらく疲れてる顔してるね」

手を触れた頭は小さい。ナマエの大きな掌で包み込めそうなぐらい

「ちゃんと休んでるのか?夜遅くまで本でも読んでんじゃないだろうな?」
「……すこ、し、だけ」
「嘘吐かないところは好ましいがね。無理してるのは、お前じゃないか」



だって、早く色んな知識を詰め込んで、身体を酷使して、地位を確立しないと、ナマエの隣に立つことも助ける事もできないのだ
医者なんて必要ない、と言う彼女の傍にいても許される医者になりたくて



「……大好きなアンタの、傍にいたいん、だ…」

告げる声は震えていなかっただろうか、そうでなければ格好がつかない

「…誰かの近くにいたい、なんて考えるのは止めな」

「どうして」

「此処では、自分独りの力で生き残ることだけを考えるのが利口なんだ。覚えときな、 坊や」



頭を撫でる手に力は無い。慈しみが伝わって来るだけだった




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▼男前な船長(女主)に実はヘタレなローがベタ惚れになる話/枯葉さん
リクエストありがとうございました!




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