▼ やがてはこの手から
「ミホーク、ブスくれないで見せねぇか」
「ブスくれてなぞいない」
「くれてるじゃないか。素直んなれ。いいから見せろ」
「おれはブスくれてないからな」
「分かった分かった」
やれやれ、腕一本を見るだけで何故こんなにも時間を取られなければならないのか。
浅黒く変色して、肉も見えているミホークの腕に、買い付けておいた救急箱から出した新品の包帯を丁寧に巻いてやる。然るべき処置はしておいたけど、生憎医療に秀でていない身分ではこの処置で正解なのか不正解なのかが分からない。とりあえず切り傷は、引っ付けとけば良い…んだよな?
「東洋の教えにこんな言葉があるんだ」
「…?」
「"猿も木から落ちる"」
「……おれは猿ではない」
「そりゃ分かってるんだけどな」
身体に鈍りを感じる事を酷く嫌うミホークの為に、手合わせの相手になってやることになった時はとても恐ろしい目に遭うのではと危惧していたが、
存外ミホークは手加減を知る男だった。ただの一管理人である自分とではマトモな手合わせが出来るなんて最初から思ってくれていなかったところも好ましい。
刃物を使うミホークに合わせて、こちらも城に眠っていたサーベルを使い相手をしていたのだが、
意外や意外、ナマエの繰り出した一撃がミホークの腕を掠め取ろうなんて夢にも思わなかった
「余所見でもしてたのかミホーク」
「違う」
「じゃあ油断?」
「…するように見えるか?」
「もしかしたら、があるかもしれんだろ?」
包帯の巻かれた腕を物珍しそうに見ているミホーク。もしかして、怪我をするのが久しぶりだったのだろうか。悪いことをしてしまった気分になった。ミホークの血がついたサーベルは、早々に捨てるのがいいだろう。
マグレとは言え、ミホークに傷をつけてしまったことにも申し訳なくなる
「………余所見、か」
「なんだ?」
ポツリと呟かれた言葉は他人に聞かせるためのものではなく、
自分で確認するだけに呟かれたらしい
「……していたのかもしれんな」
「そう、なのか?」
「余所見してたのか?」と自分で訊いたはいいが、
打ち合いをしていたあの時、ミホークの目は一瞬もブレてはいなかったと思ったが。
真っ直ぐに対峙する相手を見据え、放さなかったように見えたのだけど、それは素人の意見だ。
「お前らしくないな、ミホーク 一体どこを見ていたんだ?」
当人がそう言うのなら、そうなんだろう。ならばそれに合わせて、話を振ってやろう。
もしかすれば、余所見したことを落ち度だとしているかもしれない。だからせめて笑い話にしてやりたい。
そう思って問いかけた言葉の返答は、やはりらしくないミホークの言葉だった
「…見ていた」
「おう、何を?」
「………ナマエを、見ていた」
すり抜けて行くような恋なのだとしても
僕は間違いなく幸せだと笑うだろう
それが、
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▼familyBOSS@主とミホークが手合わせ後ラブラブしてる/真衣さん
リクエストありがとうございました!
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