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▼ ドラゴンの求愛

*過去








ナマエが嬉しそうに、巨大水槽に張られた酒をゴクゴクと飲み干して行っている。口に合ったらしい。それを見て盛り上がっているクルー達も既に出来上がっていて、全員余すところなく顔が赤い。そう言うマルコ自身も、ぼんやりと酒が回っていた。



『マルコ、これ、とても美味しい』
「良かったな。味わって呑むんだよい」
『わかった』



言葉を覚えたばかりのナマエは片言でそう告げてラストスパートを掛けた
人間の飲む量の何倍の量があの水槽に入れられたのか。クルー達の気前の良さに笑う。後で自分達の飲む分が少なくなって騒ぐサマが手に取るように分かってしまった
しかしドラゴンも酒を嗜むとは。味にしめて病みつきになってしまわないか
毎日これだけの量を飲まれていては、この船の蓄えなんて直ぐに無くなってしまう



「しっかし、ナマエは可愛いなあ」
「サッチお前、最初はビビって近寄りもしなかっただろい」
「最初はな!でも素直でキュートじゃねぇか!」
「マルコ!ナマエおれにくれよ!」
「はあ?お前まで何言い出して…」
「あ、じゃあナマエの世話係変わってくれよ!」
「嫌だよい」




手塩にかけて育てた娘に群がる街の男達のようだと思った
ならば尚更ナマエは渡せない。この子はもうおれの子だ。マルコは酒瓶を持って、迫ってくる男達の頭を端から順番に殴打していった。多少暴力的であるが、これぐらいしなければ倒れない奴らばかりで、こちらの骨が折れる




『――マルコ』
「ん? どうしたよいナマエ」
『さっきから、みんな、何の話をしてる?わたし、分からない』
「あー……お前が欲しいんだとよ」
『わたしが?』
「ドラゴンに求愛する愚かな奴らだよい」



とっくに酒を飲み干し終えていたナマエは、じっと黙って騒ぎを見ていたらしい
お行儀よく揃えられた前足。鳥のように鋭い瞳。鱗で覆われた首を傾けて、疑問符を浮かべている様子が、すっかり人間らしくて微笑ましい



『……わたし、マルコがいい』
「…え」

「お」
「おお?」
「おやあ」

『よく分からないけど、求愛されるならわたし、マルコがいいわ』



地上高くから見下ろしてくるナマエの青緑の瞳に捉えられる
ナマエの言葉の意味を理解して、柄にもなくかーっと顔が赤く染まったマルコ。その様子にクルー達はやんやと騒ぎ立てた。



「ラブラブだったか!」
「そりゃお邪魔したな!」
「末永く爆発しろ人外ども!」
「だははは!」



好き勝手に言ってくれる



「……ナマエ、ありがとうよい」
『いいえ』
「……その…なんだ、…あ、愛してるよい」
『わあ』



うれしい、人間に好かれるのって、こんなに嬉しいのね

グルルルと喉を鳴らして顔を摺り寄せてきたナマエに、マルコは眩しい気持ちで一杯だ




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▼短編@とある生物の愛 設定 or 恋情増幅@ローと水族館or動物園へお出かけ/時永さん
リクエストありがとうございました!





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