8万企画小説 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 非情にも温情らしい


"言っても無駄"な事を言わない。サカズキの部下としてまず第一に必要なことだ。それが双方にとってとても効率的であり、何より平和。考えなしに口から吐いて出るような奴ではどんなミスをしでかすかも知れないし、サカズキの怒りに触れるやもしれない。しかし、サカズキは別に怒りやすい性格をしているのではない。言動こそ豪快ではあるが、冷静沈着にどんな下っ端の言葉でも伝えられる以上最初から最後までしっかりと耳を傾ける。その上で判断を下す




なのでナマエの"言っても無駄なこと"を言わないところをサカズキは気に入っている。部下としても秘書としてもとても有能な男だ。まだ36と若いが、あれこれとよく気がつき、サカズキが効率良く動ける為に自分は次に何をどうすればいいか、を四六時中頭で考えているような奴だ。正直ナマエから言われることを完璧にこなせば、それが円滑なチャートのように進みいつも決まった通りの時間に職務を終わらせられる。サカズキにとってはとても楽なことだが、しかし彼はどうだろう?疲れるに決まっている。なのに臆面にも出さずにいるところも気に入っていたが、同時にサカズキが心配する部分でもあった。この男は、他人の為に気を回しすぎている





「……………ナマエ」
「はい何でしょう? 書類にミスがありましたか?」
「…いや、ない」
「もしかして用意しておいた万年筆のインクが切れてました?すみませんっ確認を怠っておりました」
「…せせろうしい、静かにせぇ。インクは入っとる」
「すみません!よかった!」




ペコリと頭を下げてまた自分の机に戻り自分の分の書類に向かったナマエを見ながら、サカズキはぐ…と額を押さえた。言いたいことを言わないまま話を自ら終わらせてしまった。疲れているんだろう。隠していたとて分かる。たまには休みを取って休養せんか。バカタレ。そう言ってやろうと思っていたのだが、ナマエの質問の勢いに呑まれてしまったのが情けない。対話と言うのは実に面倒なことだ




「…ナマエ」
「はい サカズキ殿、どうしました?また何かミスでも…」

「――肩は凝っとらんか」
「……え?肩、ですか?」
「そうじゃ肩じゃ。凝っとるんなら凝っとらんのならどっちじゃ」
「そうですね、凝ってます。…それが如何か?」



回りくどいところから話を始めてしまった。ナマエがよく肩を回している姿を見たことがあるのでそう声を掛けたが、ここからどう休養させるようにすればいいのか。
サカズキに問われたナマエは、己の肩をコート越しに触る。多少凝り固まっている気はするが、問題にする程度ではない。何故それをサカズキが訊くのだろうか、と首を傾けた



「……疲れちょらんのか」
「オレは大丈夫ですよ。サカズキ殿の方こそ」
「ワシぁ問題ない」
「駄目ですよ、溜め込んで無茶しては。過労と言うのはどんな人間にも来るものですから」
「……」




やけぇそれをワシがお前に向けて言おう思うちょるんに何故お前が先に言う!

内心で小さな噴火を起こしたサカズキは、先ほどまでナマエの心配をしていた自分が恥ずかしくなった。もう良い。本人が言わないのなら他人がどうこう言うものではない。

言っても無駄だった




「サカズキ殿、疲れたんなら遠慮せず仮眠室へ行ってくださいね。その間の事はオレがやっておきますんで」
「……せんでええ」
「あまりに忙しいのであれば、もう1人秘書を連れて来るのはどうです?そうすれば少しは負担も、」

「――要らん!!」



前言撤回だ。ナマエは、要らない無駄なことばかり言う




------------------------
▼サカズキのアピールに気付かない鈍感男主
リクエストありがとうございました!

prev / next