8万企画小説 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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▼ 役立たずのこの口


*海兵時代





「………サカズキ、美味いか」
「………あぁ」
「……なら、私も同じ物を食べる」
「……なんいなげな事言いよる おまんの好きなモン選べばええじゃろうが」
「……それも、そうか」
「……そうじゃ」
「…………」
「………」
「……」
「…」









なにあの空気、やだわー



腹を空かせた海兵達でごった返す賑やかな食堂の一画で、似つかわしいぐらいの冷えた空気を醸し出しているアレはいつものことだった

口下手なナマエが、無口なサカズキとの会話の糸口を探すのに必死になっているサマ
見ていてとてもハラハラするし、がんばれと応援したくもなる。何かと視線を送って伝えてみるが、どうにか言葉を紡ごうとしているナマエには届かずにいて。


要するにクザンは飯をかきこみつつ暇を持て余していた




「…………サカ、ズキ」
「………なんじゃい」
「……、……」



結局、サカズキが注文したモノと同じ定食を取ってまたサカズキのいる席へと戻ってきたナマエが今度伝えたがっていることは、「一緒に食べてもいいか」と言うところだろう。
だがそれを、第三者であるクザンが察知したって意味がない

――黙ってたってサカズキは察しちゃぁくれねぇよ、それはアンタも分かってるよなナマエ
クザンの念が通じた筈はないが、ハッと意識を持ち直したナマエが、盆を持ち直してサカズキの前の無人の席に強引に腰を下ろした



「……す、座るぞ」
「……もう座っちょるじゃろうが」
「……それも、そうだ」



今さらだがあの二人、まったく同じやり取りを昨日もやっている。一昨日もだ。記憶が正しければ去年の同じ日にも全く同じことを

ナマエとサカズキ、どちらもちっとも成長していない

ナマエは口下手でサカズキに本当に伝えたいことは何一つ伝えられていないし、
サカズキはそんなナマエの気持ちなんて気付きもせず突き放すような事ばかり言う


バカなんじゃないかな、アンタ等
聞こえないのをいい事に、クザンは目の前の二人を哀れんだ

もう飯も食い終わったし、付き合ってらんないよね
昼からの訓練に遅れないようにね二人とも









「………サカズキ」
「………なん」

「……いや…」
「……」

「………口の横に、」
「…………」

「……飯粒が付いている」
「……はよう言わんか」
「すまん……」






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▼口べたな男主×サカズキでもだもだする話
リクエストありがとうございました!






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