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▼ 青色を歩く人

「やぁや、おはようアイスバーグ」
「ナマエか ンマー久しぶりだな。 社長殿がこんな所でどうしたんだ?」
「ウチの商船が先日のアクア・ラグナのせいで全部おじゃんになってしまっただろう?だから海に出せる船がないんだ。社長は暇で暇で」
「ふ…社員達が聞いたら泣いてしまうな」
「そんなヤワな連中じゃあないさ」




皺の目立ってきた口元を緩やかに上へと向けた友人の顔は、前に会った時よりも少しやつれた様な気がする。アイスバーグは持参していた新しいお茶入りのペットボトルを投げ渡した。「これはありがたい。喉がカラカラだったんだ」と笑う、社長と言う立場のくせに現場仕事の多いツナギ姿のナマエの顔に浮かんだ汗粒を見て、アイスバーグはやれやれとからかった



「背中の生地まで汗で変色しているな。"社長は暇"なのではなかったか?」
「んー?そうだなー、そんな様な気がしただけで、別に暇ではなかったな」



暇だと言っておいて、アイスバーグが視察に来る前まで積み重なった瓦礫の撤去に加担していたんだろう。ナマエは昔からそう言う奴だ。昔より自分の立場が他より上になろうとも、底辺にいた頃の自分を知っている。だから社員や部下達から気さくに慕われ、名うての貿易会社を設立でき、発展させられているんだ。アイスバーグに指摘されて背中の汗の染みに気が付いたようで、秘書を呼び寄せてタオルを受け取っていた



「アイスバーグ、お前さんもタオル使うかい?」
「ンマー、結構だ」
「セットしてる髪に、汗が玉連なりになってるがねぇ いー男が台無しだぜぇ?」
「各ブロックの被害状況をこの目で確認するのが、今日の仕事だからな。汗掻いたぐらいが何だ」
「違いねぇなあ 社長だって汗は掻くモンだ」




カカカと笑ったナマエは汗の滲んだ袖を捲くり「さぁてもう一山片すとするかぁ」と声を上げた。勢いづけ、そのまま作業に戻ろうとしているナマエをアイスバーグは慌てて引き止めた。もう少し話しておきたいことがあったのだ




「で、ナマエのトコの商船は結局何隻沈んだんだ? すぐ必要なら、昔馴染みのよしみで優先的に仕事に取り掛かってやるがどうする?」
「持つべきモンは船大工の友人だなァ …そうだな、大型のが1、中型が1、小型が2だ。全部は沈んじゃあいねぇよ」
「ンマーそうか ウチで造った船が、そう何隻も沈まれると信用に関わる」
「カカカ、それもそうだ」




なら中型のを2隻頼めるか、得意先の島に部下を送って仕事の手筈を整えなきゃならんのよ



ナマエの太い指がアイスバーグの持っていたボールペンを奪い取って、手に持っていたメモ用紙に記帳する。分かった、と頷いたアイスバーグを見てまた笑ったナマエは、
先日の荒れた日の陰を微塵も思わせない、穏やかな海を見て目を細めた



「あのよぅアイスバーグ」
「なんだ?」

「お前の造る船が、俺は大好きなんだ」



造ったヤツに船が似るのか知んねぇが
毅然とした面構えで波を掻き分け青い海を進んで行くガレーラの船が昔っから大好きでねぇ、カカカ



一息で言い放ったナマエの言葉を受けて、アイスバーグの顔がぼっと赤く染まる
昔からド直球で人を褒める男だ。その言葉全てに嘘偽りはなく、本心から思ってることしか言わない単細胞




「だから今回もよぉ、イイ面した船を頼むぜ お前の船だから、俺は安心して命預けられんだから」
「…ンマーどうした、急に、らしくないこと言い出して」
「んー? なんだ要するに、これだから現場仕事は辞めらんねっつー話だな」
「……ふ、そうか そう言われちゃあ、おれ達もつくり甲斐があるってもんだ」
「カカカ」




誰かのタメになる船を造ろう

幼心にそう心に誓ったアイスバーグの思いは、
変わらないバカっ面下げた昔馴染みによってこうも容易く叶えられ続けている





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▼アイスバーグと古くからの友人主
リクエストありがとうございました!













@主設定
・アイスバーグより頭1つ分でかい熊みたいな男(Notくま)
・「カカカ」と「んー?」が口癖(後者のは少しアイスバーグのが移った)
・ウォーターセブンの貿易会社の社長 ガレーラとも提携している
・難しいことは考えないが真っ直ぐな直球勝負に定評のある男


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