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▼ そんなただの口実




「ヘルプミースモーカー君にころされる」
「殺しゃしねぇよ。じわじわ嬲るだけだ」
「いっそ楽にして」




大変だ!ナマエさんがスモーカー殿にやられる!
と、ダバダバ慌てていたナマエの部下達もそろそろ何とも思わなくなってきた毎日のこと
報告書に嘘偽り満載のことばかり書いて上に提出しようとしていたナマエの胸倉をスモーカーが掴み上げても、感謝はされど文句は言われないはずだ


ナマエのやる気の感じられない筆跡で書かれた書類を手に持って、
スモーカーは強張らせた顔を書いた本人におもむろに近づけた



「テメェがいつ"襲い掛かってきた50人の海賊達をバッタバッタと薙ぎ倒し"たんだァ…?」
「それをやってのけたのは部下のA君でね」
「恐縮ですナマエさん!」

「"逃亡を試みた海賊達の背中25人分に鉄砲弾をぶち当てた"っつーのは…」
「こちらのB君だ」
「何てことはありませんでした」

「"港に停泊していた海賊船3隻を全て海に沈めた"………」
「あれはお手柄だったよC君」
「ありがとうございます!」



「また全部テメェの部下の功績じゃねぇか!!」



報告書を縦から真っ二つに引き裂いて、舞い散る紙切れを無視し今度こそナマエの頭を粉砕せんとばかりの力を込めてわし掴む
「お…オォオウいたい…」と涙を見せる(嘘泣きであることは熟知している)ナマエに、スモーカーは今日と言う今日はと文句を言った



「揃いも揃って優秀だな!海賊達をモノともしねぇで船まで沈めるたぁナマエには過ぎた部下達だ!」
「いやまったくだね」

「おれ達の働きをちゃんと知ってくれてたナマエさん……マジリスペクトっす!」
「おれ達愛されてる!ナマエさんに…!」
「お前らはウルセェから黙ってろ」



他人の部隊のことにココまでスモーカーが口出しするのは、ナマエのこの奇行が見ていられないからだ。部下が作り出した結果を上司のナマエにプレゼント、だなんて聞いておかしいし見て腹が立つし、こんなボロクソな性格のナマエと十数年付き合っておきながら改心の1つもさせられなかったのが無力すぎて厭になる


スモーカーに胸倉を掴まれたまま、なにを考えているのか暗い表情を浮かべているスモーカーの顔を見て、ナマエは机の上に転がしておいたままの万年筆を手に取り白紙の紙に何事か書き留めた



「はいスモーカー君」
「……あ?」
「オレからのラブレターだよ」
「………あ゛ぁ!?」
「と言うのは冗談で、誓約書です」
「誓約書……?」




『今日から一ヶ月間だけ、頑張って動きます』


血判も無ければ承認印もない
走り書きされたナマエのサインと文だけが書かれた質素なモノで


意味がわからねぇ。そんなスモーカーにナマエは珍しくマジメな顔をする



「そろそろスモーカー君の心内にいるオレの立場がヤバそうな気がするので、ここらで挽回しようかと思いまして」



心内のナマエ云々とは、以前の任務の際に交わした会話の内容のことを言っているのだろうか

あの時はスモーカーにどう思われていようと困ったことでない風に言っていたくせに、
しっかり覚えていてちゃっかり気にしていたらしいナマエに、スモーカーは漸く眉間の皺を引っ込めた。手にはナマエの誓約書を持って



「………テメェの"頑張って"のレベルがわかんねぇがな…」
「結構がんばるよ。ノルマ達成してくるよ」
「何人だ」
「……10……いや…」
「……」
「…5人、くらいは捕まえてくる」
「…フン じゃあ奮戦するこったな」



まぁ期待はしないで待ってるとする
四角に折りたたんだ誓約書を上着の内ポケットに忍ばせて、
「精々がんばれ」と少しの心を込めた声援を投げかけた








部屋を出て行ったスモーカーの気配が完全に消え去ると、ナマエはだはぁあと机の上に頭を乗せ全身から脱力する。「大丈夫ですかナマエさん!」と心配して駆け寄ってくれた部下たちの1人、この中で一番の実力の持ち主である男に涙混じりに縋りついた



「どーしよーーー変な約束してしまったーーーー」
「いえご立派でしたよナマエさん!」
「ナマエさんがあんな事言うなんて…!」
「だってああでも言わないとスモーカー君に縁切られそうなんだものーー」



スモーカーとの縁を切られそうなタイミングを見計らって重い腰を上げたナマエ
やはり表面でいくら「どうでもいいんですめんどうくさいので」と宣おうとも、
内心ではたった一人の友人のことを大切に思っているらしい



「……海賊5人くらいなら、何とかなるよなー……」
「勿論ですよ!おれ達もついていますから!」
「ナマエさんの本気見せてください!」
「あーそうだね、出せたら見せるね」

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▼短編@これはいわゆる呪いのひとつです 設定/京永さん
リクエストありがとうございました!

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