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「#幼馴染」のBL小説を読む
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倫之助が祥子と出会ったのは夕暮れの公園だった。

その日倫之助は同じ小学校の友達と遊ぶ約束をしていたのでそこで待っていたのだ。だが友達は来なかった。倫之助が一人でブランコを漕ぎ、一人で滑り台の頂上に登り、そして降り、一人で砂場で砂弄りをしていくら時間を潰してみても友達は来なかった。後日来なかった理由を聞けば「おかあさんと買い物にいってたんだ」と無邪気に悪びれもされなかったわけだが、その日の倫之助はごく普通に時間になっても来ない友達の身を心配していた。

じこにあったのかな、
さいきん学校で噂になってるふしんしゃにであっちゃったのかな、
ゆうかいされたのかな、みのしろきんはいくらかけられたんだろう


作った砂団子を潰しながら倫之助は一人どんどん不安に落とされていく。黄昏時の公園にただ一人 この世界で自分一人だけが存在しているような錯覚に襲われ、倫之助があともう一歩精神が子ども寄りであれば泣いていた。

蹲るその小さな背中に声をかけたのが、口裂け女として生きる都市伝説と化していた祥子だったのだ



「大丈夫?ぼく」

「……おねえさん だれ?」


茶色のセミロングに、白いブラウス、桃色のロングスカートを風に揺らしながら、祥子は笑った。
砂場にしゃがみ込むその小さな身体の横に自分もしゃがんで、顔を覗き込んだ。


「ぼく、さっきからずっと独りでいるよね?誰かを待ってたの」

「まってるよ」

「誰かな。お父さん?お母さん?」

「ううん、ともだち」

「そっか、お友達か。でも来ないね、お友達」

「こないね」


落ち込んでいる様子はない。淡々とした言葉遣いなのは性格だからなようだ。祥子は倫之助の頭を撫でた。なに?と言いたげな目が見上げてくる


「寂しくない? 私と一緒に遊ばない?」

「いいよ。もう帰る」

「あら、もう待たないの?」

「けっこうまった。もう飽きたんだもん」


ズボンについていた砂を払った倫之助は立ち上がってランドセルを背負いなおす。帰すまい、と祥子がその腕を掴んで引き止める。「おねえさんと遊ぼうよ」しかし倫之助は首を振った。祥子は「どうして?」と問う。「だって」倫之助は祥子の顔を指差した


「おねえさん、風邪ひいてるんでしょ?なら早くかえってねないとだめだよ」


純粋な子だと祥子はまた笑った。ネタ晴らししてやろう、驚かせてやろうと「これはね…」とマスクを取った。

そこにあったのは、耳元まで真っ赤に裂けた異形の口 女の顔の半分を占拠している巨大な口をにんまりと歪めて「口を隠すためのマスクなんだよ」



普通ならばここで大半の物は失神するか失禁する。泣いて、逃げ出すのだ。祥子は人間たちを驚かせるのが大好きだった。特に子どもはいい。泣いて、おしっこを漏らして、喚きながら怯える。その姿を見るのが祥子の快楽だった。



しかし倫之助は普通の子どもとは違っていた。実の両親でさえ「あの子は感情の起伏ってぇのをあたしの腹ん中に落っことしてきたんだろうさね!」ガハハ!! 豪快に笑って言うぐらい、倫之助は平常心の持ち主である



「お口が大きくなるびょうきなの?たいへんだ。きびょうだねそれは。早くおいしゃさんにみてもらってね。 ばいばいおねえさん」

「え? う、うん。ば、ばいばい……」



あ、あれぇ…?



そんな倫之助に興味を持った祥子がこれから先、飽きるほどちょっかいを出しに行くのが二人の始まりの話である




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