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生まれた時から人生ハードモード それがぼく・日下 真継に課せられた試練なのです。

まつぎ、と読むぼくのこの仰々しい名前は、ぼくを生んですぐ死んだ母親がつけた名前ではなく、四歳までぼくを育ててくれた父さんがつけてくれた名前だ。なにを継いでほしくてこんな名前をつけてくれたのかは知らないけど、格好いいので気に入っている。ぼくの所有している数少ない"ぼくのもの"だ。


強盗に殺されたぼくの父さんを最後に、日下家の血を持っているのはぼくだけになった。今の昨今、血縁関係の者がいなくなるなんて言う珍しい事態に陥ってしまったぼくは十二歳になる今日まで独りで生きてきた。これまでに八百回は生死の境を彷徨いつつも、どうにか生きて来れているのもぼくが世渡り上手な性格をしていたからかも知れない。

家はないけど夜露夜風を凌げるプレハブ小屋を川原の近くに拠点として構えている。何度か川の増水と氾濫で壊れそうになったけどその度補強して来たからちょっとやそっとの台風じゃビクともしない強いプレハブになった。
あとは食うものと飲めるものだけど、これは本当にどうにでもなる。人間は理性と好き嫌いを失くせばこの地球にある大半の物は食べられる。あとの半分は毒を持つものだ。





今日は家具を調達しに来た。ちょうど昨日、特に使う宛てもなかった机が急に壊れた。料理を並べたり花瓶を飾ったりするでもなく、本当にただあっただけの机だったけど、無いと無いで不便だと言うことに気付いた。だからぼくは今、スクラップ場にいる。


生活排水とか垂れ流す系の腐った都市だけど、ゴミ捨てもとても杜撰な感じになっている。何トンものゴミを積んだトラックが入れ替わり立ち替わり入って来て、機械が処理する巨大な穴の中に放り込む――通称:ダストホールー― そこに入って来たゴミを機械が"よく燃えるもの"と"燃えるもの"と"燃えないもの"とに分けて餞別する。まあ結局ゴミは全て焼却処分されるんだけど。
その機械が処分してしまう間にゴミ捨て場に入って物色すれば、いい感じのゴミを持って帰れると言うわけだ。
今日は机がターゲットなので、相手は大きい。独りで持って帰れるサイズの机ないかなーなんて軽い足取りで、まだ同業者の誰もいないゴミ捨て場に入る。いつもならオッサンとかオジサンとかが先に来てゴソゴソしてるんだけど、今日はぼくが一番だったみたい。好都合だ。机以外にも良い物があったら取っておこう



「よーーし今日もお上の人たちが住まう上層部の方に向けて一礼のち着手させていただきまウワアアアアアアアアアアア!!?」



急に叫んで煩くしたりしてごめん。でも勘違いしないで、ぼくは別に情緒不安定になったわけじゃないよ


いつもの機械の穴の上に、ナニカがあるんだ。 ナニカって?分かんない。おっきなステンレスとか鋼鉄っぽい硬いものがあって、ソレが機械のダストホールを塞ぐような格好で倒れていた



「え、え、え?」おっかなびっくりしつつ近寄ってみる。好奇心はあるよまだ十二歳だもの


近付いてみると、それが何だか分かった。

ぼくが一番最初に見た塊は"指"だった。投げ出されるようにして五本の指と手が仰向けになっている。
ぼくがグルリと一周して観察してみると、後ろ側には"足"らしきものが二本あった。分厚い装甲のようなものに覆われた足も、手と同じように投げ出されている。

少し後ずさって見てみた。あった。"頭"だ。ソレの頭がうつ伏せになっている。



「……巨大ロボットー!!?」



ロボットだった 巨大なロボットが、ゴミ捨て場に棄てられていた




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