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あいつはああ見えて魚を料理するのが一番上手い。獣の肉や野菜でもなく、魚だ。
食事をする時に煩わしくないよう、小骨の一欠片も残さないように取り除き、
魚の全てを最高の食材にして輝かんばかりの料理を食卓へと並べる。
あいつの料理のレパートリーも、魚料理が一番多いと聞いたことがある。そんな狼、あいつ以外にいるのなら教えて貰いたい。仮にいたとしても、俺にはあいつだけで手一杯だからこれ以上は要らない。




「どうですかナマエさん!」


本人は認めたがらないが、犬のように左右に振られる尻尾を思い切り引っ掴んで
「おう、頑張ったんじゃねぇのか」と褒めてやった。
なのに、せっかく主人がよくやったと言ってやっているのに第一声が「イダダダダダダ!!!」は無いんじゃねぇのかウル


「だ、だって思い切り尻尾を握り潰そうとしてくるからじゃないですかぁ…!」


鋭利な牙を剥き出しにしても、目が涙目なので怖くない。
もちろんこいつに恐怖を感じたことなんて今までに一回もないわけだが。


「主人を睨むとはイイ度胸だな、ウル」

「す、すみません!そ、そんなつもりとかじゃ……」

「……分かってる。からかっただけだから、そんな一々挙動不審になるな。見苦しい」

「は、はい……」


耳を垂れさせ、「…片付けしてきまぁす」と言ってスゴスゴと厨房の方に引き返して行く背中に


「美味いぞ、ウル」

「っ!ナマエさぁああん!」

「…おい」


抱きついてくるな、お前の毛がモサモサだから暑苦しいんだよ。あと無礼だ


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