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気にしないゲーマー+気にしてほしいロボット(本物)「あ゛っ!! まーた負けた……!!」
≪……すまない≫
「謝られると余計にムカつく…! おいこら、もっかいやんぞ。次はマリカな!!」
≪……了解した≫
手馴れた様子でテレビとハードを繋げ、ソフトを入れている我が主の様子を リガルドは微妙な面持ちで見守っていた。まだゲームを続けるらしい。最初のストファイから始まったこの時間は、もう既に6時間にも及んでいた。
リガルドは我が主――ナマエの従者ロボットである。
いや、少なくとも"そうである為"に造られた存在だった。
ナマエは大のゲーム好き――俗称:ゲーマーと呼ばれる類の人間で、幼い頃から多種多様なゲームをプレイし、またその面白さにのめり込んで行った者だ。
学生の本分である試験期間と欲しかったゲームの発売日が重なっていれば後者を優先するのは当たり前 ゲームは発売してから三日以内に全クリするのが醍醐味 教科書を読む時間よりも市販のゲーム雑誌を読む時間の方が長いのも当然
しかし堕落しきった人間なのかと言えば、そうではない。
そのゲームとやらを手に入れるため、達臣は学校での成績は常に良を維持していた。
リガルドが我が主を尊敬するのはそこ、意思の強さである。
一日二十四時間の内、ゲームを触らない時間があったとすると、その空いた時間には必ず勉強をしていた。
ゲーム雑誌を読む時間の方が教科書のそれよりも長いと先述したが、それはゼロであると言うことではない。
聞こえは悪いが、両親から金をせしめる為に、好きなもののために努力をするナマエの姿は、リガルドの目にも好意的に見えるのだ。
「さすが俺の従者ロボだな……ゲームの腕前もピカイチとかパネェぞ…」
≪一つ言わせてくれナマエ 私のゲームのスキルが上がったのは主にナマエの相手をずっとし続けて来たからだ。私の初期スキルにそんなものは搭載されていない≫
「ぐぐぐ……オンライン対戦ではランキング上位を欲しいままにする俺がリガルドにだけは勝てないわけってなんだ…!?プレイヤースキルがリガルドより劣ってるってのか!?」
次第に言葉に熱を持ち始めたナマエが、プレステに挿した片方のコントローラをリガルドに「ん!!」と渡す。これはどうも、またナマエの闘争心に火をつけてしまったらしい。
「次はこれだからな!!」と有名なロボットアニメのタイトルがついた無双ゲームをプレイするようだった。
何故目の前にゲームよりも鮮明な、本物のロボットがいると言うのにナマエは気にしないのだろうかとリガルドは思う。
これでは正に、ナマエのゲームの対戦相手になる為だけにいるみたいなものではないか。
≪……ナマエ これを終えたら息抜きに外の空気を吸いに行こう≫
「あ!?………お前が俺に勝てたらコンビニくんだりまで行ってやんよ」
≪その言葉、インプットしたからな。忘れるなよナマエ≫
「おおよ。来いや生意気なロボットめ」
ロボットと男には、絶対に勝たねばならぬ戦いがある―――
このフレーズは、もっと真面目な場面で使うものだと思っていたリガルドは現実との相違に頭痛がしそうだった。